【五十音順・おすすめ小説紹介】8冊目 荒木源
おすすめ本紹介、8回目です。
この記事では著者の五十音順に、わたしのおすすめ本を紹介しています。
8回目は「ちょんまげぷりん」「オケ老人!」など痛快で読むと元気がでてくる作品が持ち味の荒木源氏からこちら。
明らかにどこかの国を彷彿とさせる表紙がどうしても気になり、購入しました。
ペックランド人民党中央委員会委員長・ジョンウィンというのが本作の主人公。
彼はペックランドで絶大な権力をもち、ミサイルの発射実験の指揮や外国への挑発行為に勤しんでいます。
ある日、孤独を癒す話し相手とするために、近隣国ヤップランドから取り寄せた人型AIロボットが届き、少しずつ歯車が狂いはじめます。それは、いきなり旧知の人間のように話しだし、自分は暗殺された彼の異母兄、ジョンナムールだと主張。なんのつもりか?、諸外国がスパイとして送り込んできたのかと、はじめは怒りを露わにしたジョンウィンですが、次第に彼との会話に居心地のよさを感じ始めてーーー。
近隣の軍事国家、北朝鮮を明らかに意識した舞台設定で、話のなかででてくる状況も2017年の情勢ととても似通っています。「ありえたかもしれない状況」「これから起こるかもしれない未来」として、ヒヤリとしながら読破しました。
想像でしかなくても、孤独な支配者によって、綱渡りと言えるほど危ういバランスで保たれている国家を覗き見たような感覚になりました。
いいとか悪いとか、批評しがたい作品ではありますが、エンターテイメント作品ながら、かの国の危うさについて考えさせられる「毒」のある話だと思います。
傾向は全く違いますが、著者の本では冒頭に書いた「ちょんまげぷりん」も好きです。こちら肩の力を抜いてクスッと笑いながら楽しんでもらえると思います。