壮大な長編も、TLで気になって読んでみたい本も、好きな作家の新刊でも、どうしても読めないときがある。
毎日残業で余力がないとき、理由も分からず落ち込んでいるとき。本は読みたい。でも気力がない。そんなとき読みたいのが、只々笑える小説。
今日はどうしようもなく笑える個人的3冊を紹介します。
①国語入試問題必勝法(清水義範著)
これ、大好きなんです。
表紙からしてふざけまくった、おちょくってる感じがする装丁がいい。最近新装版が出たのに驚いたけど、この本が売れるのは分かる。
表題の『国語入試問題必勝法』は、本当に高校・大学の入試問題ででるような国語現代文問題について書いている。学生の”僕”が家庭教師の先生に、入試問題の必勝法を学ぶという短編で、わたしはこれを呼んで大学に無事合格した(※個人の感想です)。
「あるある!」と言いたくなる絶対解いたことのある既視感満載の問題文の解き方を、けれんみたっぷりに教える先生と、先生の教えを吸収していく学生の掛け合いが面白い。
でも、本当に笑えるのはこの短編集に掲載されている最後の話『人間の風景』だ。最初どころか何度読んでもふふっと笑ってしまう。老人たちがリレー小説を書く、という話で、文章が書けなくて七転八倒する人、変に情緒たっぷりに書いて逆に笑いを誘う人、職業柄犯罪の調書のように書いてしまう人。リレー小説がおかしな方向へ転げていくのがもう堪らない。3冊のなかで唯一の短編なので、ぜひ気軽に読んでみてほしい。
②楡家の人びと(北杜夫著)
一番面白いんじゃないかと思ってる。
北杜夫が自身の家族をテーマに書いた(※創作を含むが)自伝的小説。自伝、家族の話をここまで滑稽で笑えるテイストに出来るのかと驚く。脳病院(今でいう精神科)を営む一家の祖父、父、孫達と病院関係者を巡る流転の人生記。関東大震災、太平洋戦争を挟み激動の運命に翻弄される、どちらかと言えば過酷な状況の自伝なのに、登場人物のあまりの変人っぷりと奇矯な行動、失笑を誘う小心さや俗物っぷりを容赦なく書いていくので、全然湿っぽくならない。夜読んで、笑い過ぎて眠れなくなったことがある。逆に落ち込んだ日に読むと可笑しくて精神が復活するのでおすすめ。
長いけど、長いと敬遠せず是非2巻まで読んでほしい。2巻の『楡脳病院50周年記念運動会』のくだりでは笑い過ぎて腹筋が死にました。
度々紹介してるこの本。広く色んな人に!と勧めにくいけどこれも好き。
ただ、正統派の三国志を好む人は、何だこのふざけたは!と怒り出すのではないかと不安になる。三国志演義がOKな人は大丈夫。この本を読んだあと、もう普通の目で三国志を見られなくなる。
稀代の大変人諸葛孔明に、その場のノリとスター性だけで、どんどん民衆を犠牲になぜか生き延びる迷惑男劉備、人間兵器というレベルの張飛、関羽ら。劉備軍団という歩く災害に振り回される曹操や孫権、というイメージになってしまう。講談風の語り口が軽快で読みやすく、油断していると次のページにとんでもないギャグが入ってたりするので電車では読めない。これも2巻で笑い死んだ。学生時代これを読まなくてよかった。漢文で三国志が出題されたら気が散って解けないところだった。世界、いや宇宙一の大変人孔明が見られるのはここだけ。
以上、笑いたいときの3選でした。
最近は楡家の読み返しにハマってますが、仕事のストレスが吹っ飛ぶくらい面白い。でもあんな人達が家族だったらちょっと嫌だけど。