本の虫生活

おすすめ本の紹介などしています。著者をア行からワ行まで順番に。

【おすすめ本2019】54冊目 田辺聖子

おすすめ本紹介、54回目です。
この記事では著者の五十音順に、わたしのおすすめ本を紹介しています。
今回は田辺聖子氏。

新源氏物語(上) (新潮文庫)

新源氏物語(上) (新潮文庫)

 

 言わずと知れた日本の古典史上の大長編、源氏物語の現代語アレンジです。

源氏物語の現代語訳やオマージュ作品は厳密な現代語訳、小説、マンガなど多岐にわたって多くの作家が手掛けていますが、源氏物語をざっくり知りたい、できれば読みやすいものがいいという方にぴったりの1冊です。上・中・下巻の3巻構成となっており、章ごとに読めるので原作を読むのに近い感覚で読めますし、田辺氏の絶妙な文章は読みやすくも古典の風格を感じられます。

これから読む方向けに、ざっくりと上・中・下巻をご紹介していきます。

 

上巻

空蝉、夕顔の巻、幼女時代の紫の上、末摘花、おぼろ月夜、賢木の宮、花散る里、須磨、明石の人など前半のメインを飾る有名な話が鮮やかに描かれています。きらびやかな源氏物語の世界を純粋に楽しむなら、上巻がおすすめです。 

 中巻

明石から都へ戻ってきた源氏が、権力を手中に収めていく中巻。それぞれの姫君の運命も大きく変わり、起承転結の転の章を迎えます。若き情熱の日々から落ち着き始めた源氏。それと裏腹に周囲では不穏な空気が立ち込めたり、悲しい予感を覚える感傷的な巻です。

下巻

最愛の紫の上を失った源氏が出家を決意する下巻。この辺りになると主人公は源氏から離れ、新しい世代の物語に移り変わっていきます。かつて自分が突き動かされたのと同じ種類の情熱によって追い詰められていく源氏の苦悩を感じる感です。因果応報、巡る愛憎の描写が真に迫り、読んでいてドキドキしました。

 

上、中、下巻のどれも読後感が違うので、読んでいて飽きない構成でした。悲恋や愛憎劇、因果応報、権力を持つもの、持たない者それぞれの苦悩、…。平安時代の物語なのにありきたりな古臭さや辛気臭さを感じないのは、扱っているのが普遍のテーマだからでしょうか。田辺氏の文体が雅でとても雰囲気に入っていきやすかったのもよかったです。上巻が一番とっつきやすいですが、下巻が一番凄みを感じて好きです。

古典の授業で習ったときはあまり好きになれなかったのですが、この作品を読み切ってからは印象がガラっと変わりました。甘い恋愛小説とは違った、酸いも甘いも嚙み分ける大人の恋愛、そして苦悩を描いた作品なのだと知りました。

 

これらに加え、宇治十帖編も刊行されています。

新源氏物語 霧ふかき宇治の恋(上) (新潮文庫)

新源氏物語 霧ふかき宇治の恋(上) (新潮文庫)

 

 表紙も雅で、本棚にそっと置いておきたい作品です。