本の虫生活

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【海外編】懐かしの児童文学

子どもの読書コンクール、青少年読書感想文コンテストなどが行われるいまの時期は、なにかと児童文学に関する話題が耳に入ります。

自分が子どもの頃に読んでいたような本が話題にならなくなってきたのが寂しいので、当時ハマっていた児童文学についてちょっと書いてみました。

 

ダレン・シャン

ダレン・シャン―奇怪なサーカス

ダレン・シャン―奇怪なサーカス

 

 同名の作家ダレン・シャン著のファンタジー小説で、全12巻+外伝が出版されています。

<あらすじ>

好奇心旺盛でクモとサッカーが好きな普通の少年であるダレンは、友人スティーブ・レナードと連れ立って奇怪なサーカス、シルク・ド・フリークを観に行った夜から、思いもしない運命に翻弄されてしまう。危険で蠱惑的な演目に目を奪われながら、サーカスの団員クレプスリーが操る毒蜘蛛マダム・オクタにすっかり魅了されたダレンは、サーカスから蜘蛛を盗み出してしまった。しかし、蜘蛛の毒によりスティーブが意識不明になるという事故が起こり、ダレンは友人を救うためにクレプスリーの元へと駆け付けるが、その代償は大きいものだった。

 

自分のミスから友人を危険な目に遭わせ、半バンパイアになり家族や故郷を捨てざるをえなかった少年という設定が、ファンタジー小説にしては珍しいと思います。希望や目標を胸に旅に出るのではなく、後ろ髪を引かれ、友には理解されず、厳しい現実に葛藤する主人公の心理描写も豊かで、ダークファンタジーとして大人も熱中する人が当時多かったのも覚えています。

なんとその後、『ダレン・シャン前史 クレプスリー伝説』なる外伝が出ていたんですね。全く気づきませんでした。今度読んでみます。

ダレン・シャン前史 クレプスリー伝説 1 殺人者の誕生 (児童単行本)

ダレン・シャン前史 クレプスリー伝説 1 殺人者の誕生 (児童単行本)

 

 

モモ

モモ 時間どろぼうとぬすまれた時間を人間にかえしてくれた女の子のふしぎな物語

モモ 時間どろぼうとぬすまれた時間を人間にかえしてくれた女の子のふしぎな物語

 

 町はずれの円形劇場跡に迷い込んだ少女モモが、時間を取り戻すために冒険する物語。言わずと知れた児童文学の巨匠、ミヒャエル・エンデの不朽の名作。

<あらすじ>

町の人たちは不思議な少女モモに話を聞いてもらうと、なぜか幸福な気持ちになり、町は平和に包まれていた。ある日そこへ『時間どろぼう』という男たちが現れ、町の様子は一変する。時間貯蓄銀行という怪しげな組織が登場し、町の人たちは「時間を貯蓄すれば命が倍になる」という触れ込みを信じて時間を奪われてしまった。時間を節約し始めた町の人たちは、人生を楽しむことも忘れ、モモのいる円形劇場には子どもしか来なくなってしまった。モモは奪われた『時』を取り戻すため、カメのカシオペイア達と協力し、時間どろぼうと戦うことを決意する。

 

『時』に関する深い考察が散りばめられた本作は、児童書の枠を超えて世界中で愛されています。昔読んだという人も、もう一度読み直して損はない作品です(下のサイトでは、モモに出てくる名言が紹介されているので、「昔読んだけどよく覚えてない」という方の備忘録にでも)。

また、エンデと言えば『はてしない物語』も言わずと知れた大作で、大好きな本のひとつです。エンデの作品はすっと心に沁みとおるような言葉が特徴的ですね。登場人物たちのちょっとした会話にも深い含蓄のある言葉が多く含まれていて、立ち止まりながらゆっくり楽しむ本だと思います。いつか原典を読んでみたいです。

 

レイチェルと滅びの呪文

レイチェルと滅びの呪文

レイチェルと滅びの呪文

 

 ハリーポッターシリーズの人気に押され、当時はあまり目立たなかった気がします。「子ども向けにしてはグロい」とか内容が暗いとかいう批評をちらほら聞きましたが、ダレン・シャンや他の小説を読んでいたので、そんなに気になりませんでした。でも、低年齢向けではないかもしれません。

<あらすじ>

 暗黒の星イスレアは、邪な魔法によって支配されていた。魔女がつくりだした邪悪な生きもの、攫われ奴隷にされた子どもたち、ものに込められている『生きた』呪文の数々の渦巻く異世界と地球の物語。地球を支配しようと画策する魔女ドラグウェナによって、主人公レイチェルと弟エリックは異世界へと引き込まれてしまうところから物語が始まる。ドラグウェナの目的は、強力な魔力を持つ子どもを見つけ、自分と同じような魔女にしてしまうことだった。レイチェルは魔女の支配を逃れ、打ち勝つことができるのかーーー。

 

1巻ごとに完結していますが、シリーズとして3巻続いています。テンポの早いストーリー構成で、長いシリーズと比べるとさらっと読めます。ダークな心理戦と、『子ども』と『大人』それぞれの描き方が独特の作品です。テーマの取り上げ方が変わっていると感じました。ファンタジーや児童書といった先入観を裏切るような一風変わった物語だと思います。

 

パーラ 

パーラ〈上〉沈黙の町

パーラ〈上〉沈黙の町

 

 冒頭から章を追うごとに増えていく詩のフレーズが気に入り、好きになった作品です。最近までタイトルが思い出せず、色々検索してみてようやく見つけました。ラルフ・イーザウというと『ネシャン・サーガ』が圧倒的に有名なので、同じ作者だとは気づいていませんでした。

<あらすじ>

詩人の町シレンチアでは、ある時から奇妙な病が流行し始めていた。語り部ガスパーレが言葉を話せなくなり、町中で言葉が奪われていることに気づいた少女パーラは、ガスパーレを救うため、謎の人物ジットの居城にひとり向かっていく。冒険の末、呪われた庭で明かされたのは、なんとパーラ自身の驚くべき出生の秘密だった。

 

『モモ』や『不思議の国のアリス』の雰囲気に似ていると概ね高評価だったのに、意外と知らない人が多い作品です。ラルフ・イーザウは有名な児童書の著者ですが、確かにその割には『パーラ』はあまり知られていないような気がします。児童書としてはあまり見ない「詩」を効果的に利用した文章が子ども心にとても魅力的で、当時全部暗記するくらいハマってました(今だったら暗記する気力はないと思います…。子どものポテンシャルって少し羨ましい)。ソネットという14行から成る定型詩が作中で重要な役割を果たしており、読み進めるごとに1行ずつ追加されていく仕掛けにはワクワクしました。全部読み終わってから詩を読むと印象が変わるというのもミステリっぽくていいです。詩がリズムのある美しい日本語で訳されているのも嬉しいです。最近はめっきり本屋で見かけなくなったのが残念です。

 

サブリエル

サブリエル―冥界の扉〈上〉 (古王国記)

サブリエル―冥界の扉〈上〉 (古王国記)

 

 <あらすじ>

チャーター魔術が栄える古王国では長年、魔術師によって冥界から蘇ろうとする死霊たちが滅ぼされ、平安が保たれていた。しかし、ある時から古王国との壁を越えて死霊たちが隣国のアンセルスティエールに出没するようになった。何者かが裏で糸を引いて大死霊たちを蘇らせ、死霊たちを操っているらしい。不気味な予兆を感じるなか、主人公サブリエルはある事件をきっかけに冒険へと足を踏み出すことになる。古王国で治安に努める父が姿を消したことで、平穏だったサブリエルの日常は破られてしまった。父の身になにかが起きたに違いないと察したサブリエルは単身、古王国に乗りこむことを決意する。

 

児童書は分厚いものが多いけど、特にこのシリーズは分厚かったです。『古王国記』シリーズ三部作すべて読むのに結構時間がかかりました。三部作といっても二作目からは主人公が交代し、歴史ものを読んでいるようなスケール感がありました。全体の構成もディテールも、緊迫の戦闘シーンも読みごたえがあって、全体的な完成度の高いシリーズです。主人公が魅力的で感情移入しやすいのもいいです。

いま気づきましたが、帯にダークファンタジーって書いてあるんですね。王道じゃなくてダークファンタジーばかり読んでいたみたい…。ナルニア国とかハリーポッターはほとんど読まなかったし。でも『古王国記』シリーズは人物が魅力的で、あまりダークさは感じませんでした。

また、同著者の『セブンスタワー』シリーズも好きで読んでました。カッコいい闘う女の子に憧れる年ごろだったので当時一気読みしたのを覚えています。こちらはサブリエルよりもやや低年齢向き?でサクサク読めるシリーズでした。

セブンスタワー〈1〉光と影 (小学館ファンタジー文庫)

セブンスタワー〈1〉光と影 (小学館ファンタジー文庫)

 

 

 児童書の世界は裾野が広いので、もっと知りたいと思います。大人になると自然と離れていっていまうけれど、『モモ』や『パーラ』などは今読んだら別の感想を持ちそうなので、読み返してみたいです。

星の王子さま』などは大人になってからハマる人が多いですし、時間があれば童心に帰って読むのもいいですね。