【2019年目標】読書と記書と話書
新年あけましておめでとうございます。
昨年はこのブログを本格的に書き始めたり、イベントに参加したり有意義な一年を過ごすことができました。
今年はもっと進捗管理をしたり、目的を明確にして継続していきたいと思います。本紹介以外にも色々と書く予定です。今年もどうぞよろしくお願いいたします。
そしてお題について。
本年の抱負は、以下の3つを意識して使い分けることです。
①読書
②記書
③話書
①は言わずもがな、未だ知らない本に出会い見聞を広げることです。SNSのおすすめを見たり、人から勧めて頂いた本を読んでみると、自分があまり知らなかった分野の本と出会えることが多いので積極的に使っていこうと思います。本屋でいつも立ち寄らない棚に寄ってみる、またいつもと違う本屋に立ち寄るというのもよいです。
達成できるか微妙ですが、今年は西洋哲学に手を出してみようと考えています。ハイデッカーの『存在と時間』の完全読破は特に長年の悲願(?)なので、挑戦してみるつもりです。
②はわたしが考案した適当な言葉です。読書をもじって、書を読むのではなく記すという意味です。本を読み、その感想や考察を文章に起こすこと、という意味をこめて造語しました。読書は基本的に内的な作業です。一人で本を選び、一人で読む。内省的な作業自体は好きですが、折角ブログを書いている以上『書くこと』の意義を今年は意識しようと考えています。
本を読んで芽生える感情や思考は、一人で楽しんでいる状態ではほとんど言語化されません。感情を揺さぶられたり、新たな知に触れて思考が巡ることを楽しむのもよいですが、その状態に『名づけ』をすることでぼんやりとした思考が実体化していきます。それが文章に起こすことの醍醐味だと思います。頭の中で読んだ本を何度も反芻し、文章を練り自分の思考を言語化していく作業を続けると、仕事でもアイディアを素早く言語化できるようになるので結構役に立ちます。今年は去年よりも人に『伝わる』文章を心掛けていきたいと思います。
③も造語です。本を読み、その感想等を他人に話し共有することという意味を込めました。読書家というのは、他の趣味を持つ人と比べて孤独なことが多い気がします。スポーツや音楽(鑑賞含む)のように他人と一緒に経験を共有しづらい上、分野が広すぎて読書家同士でも趣味が合うことは結構難しいです。好きな本や作家が被るというのは、ベストセラー作家や有名な古典以外ではあまりないとも思います。そうなると、自然と趣味が合う人同士で盛り上がるということは確率的に少ない気がします。
しかし、この苦境を救ってくれたのが『読書会』でした。SNS等(わたしは全てTwitter経由です)で告知をしているイベントで、好きな本について語り合うというシンプルなものから、課題図書ありや分野別のものなど多彩に行われているようでした。個人主催のこじんまりとした集まりが多く、知らない人同士が当日会うというのも最初はかなり警戒していましたが、去年は和やかで好感のもてる集まりばかりでとても楽しませて頂きました。
このイベント参加を通じて感じたのが、『話すこと』の楽しさです。文章のように時間をかけて思考を整理し、人に伝える手法の方が自分の能力開発や新たな気づきの発掘などには役に立ちます。ですが話すことの良さは、何より楽しいことです。楽しそうに好きな本の話をする人を見ると、こちらも嬉しくなりました。本の話を一日中できるという体験は強烈で、すっかりやみつきになってしまいました。今年も色々と参加しようと思います。
以上、今年の抱負でした。
あまり目新しさはありませんが、できることをコツコツ積み上げる年にしていきたいと思います。
お読みいただきありがとうございました。
今年も気長にお付き合いいただけると幸いです。
【2018年イチオシ本ベスト10】今年読んだ本たち
今年もいよいよ今日で終わりとなりました。
慌ただしくあっという間に過ぎていった1年だったように思います。
今年から本格的に記事を書き始めて、誰も読んでくれないんじゃないか、バッシングを受けるのではないかと戦々恐々としていたのですが、そんなことはなく沢山の方が覗きに来てくれたことに感謝致します。遅筆な上に拙い文章ですがこれからも楽しんでくれる方がいれば幸いです。
さて、本題に移ります。
今年に読んだ本の総決算をしようと思い、読んだ中から個人的ベスト10を選びました。
- 作者: ウンベルトエーコ,河島英昭
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 1990/02/18
- メディア: 単行本
- 購入: 11人 クリック: 197回
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新しい本ではないですが、ずっと読んでみたかった念願の名著を読み終えた感動はひとしおでした。
今年、NHKの100分de名著という番組で紹介されたお蔭か書店に平積みされており、ようやく手に取りました(実は前に読んだのですが、よくわからなくて挫折していました💧)。中世ヨーロッパの修道院で起こる不可解な連続殺人事件に修道士の師匠と弟子のコンビが挑むミステリ小説で、ヨハネの黙示録を彷彿とさせる奇異な殺人や迷宮のごとき図書館、次々と浮かぶ容疑者に手に汗を握りページが進むエンターテイメント性が見事でした。
内容は中世のキリスト教の宗派間対立、教会と王、庶民の関係性の変化など、歴史に詳しくないと少し読みづらいところもあったのですが、これを読みながら学びたくなりました。当時、一部の階級しか触れることのできなかった『知』への渇望の大きさを知りました。
👑2位 犯罪 フェルディナント・フォン・シーラッハ著
小説を通じてドイツ政府まで動かした衝撃作『コリーニ事件』と迷ったのですが、シーラッハという作家を知る切っ掛けとなった大事な一冊なのでこちらにしました。
作品数は少ないですが、この作家の本はすべてお勧めです。今年知ることができて大変ラッキーでした。本書は犯罪を犯した境遇の異なる様々な人達の姿を淡々と描き出しています。戦慄するような猟奇犯もいれば、同情せざるを得ない哀れな犯人も出てきます。序文には、以下のような言葉が記されています。
私の話に出てくるのは、人殺しや麻薬密売人や娼婦です。それぞれにそれぞれがたどってきた物語があります。しかしそれは私たちの物語と大した違いはありません。私たちは生涯、薄氷の上で踊っているのです。氷の下は冷たく、ひとたび落ちれば、すぐに死んでしまいます。氷は多くの人を持ちこたえられず、割れてしまいます。私が関心を持っているのはその瞬間です。幸運に恵まれれば、なにも起こらないでしょう。幸運に恵まれさえすれば。
人はなぜ罪を犯すのか。答えのない問いに静かに向き合う気持ちになる作品です。
👑3位 星夜航行 飯嶋和一著
気合を入れないと読めない飯嶋和一氏の最新作です。
今年6月に刊行した直後に買い、全力で読んでも1か月強かかりました。分厚さもさることながら、ほとんど歴史書のような圧倒的情報量に殴られ、本筋を追うだけでもぜいぜい息を切らせながら最後まで読み切りました。飯嶋和一氏の本は独特の達成感があります。
徳川家康の息子、三郎信康に仕えた男の数奇な生涯を描いた本書は、信長の世から、秀吉の晩年までで翻弄された諸侯や民衆の姿を克明に映し出しています。特に、戦国時代うと武田信玄や織田信長、それか関ヶ原の合戦などが注目されがちですが、本書は秀吉の世が中心で、鎖国前の交易や朝鮮出兵の話がふんだんに盛り込まれていて面白かったです。
ただ、飯嶋和一氏の本を読んだことがない人の1冊目にはお勧めできません。多分心が折れます。初めての方は『始祖鳥記』『雷電本紀』『黄金旅風』あたりがお勧めです。ぜひお試しください。
4位 夜と霧の隅で 北杜夫著
北杜夫氏の芥川賞受賞作品と聞いてずっと読んでみたいと思っていたのですが、なかなか本屋にないので読みそびれており、今年偶々立ち寄った書店で見つけました。北杜夫氏の本はどの書店でも少ししか見ないのですが、それでも『どくとるマンボウ』シリーズや『楡家の人びと』などは比較的入手しやすく、他はあまりありません。今年は『夜と霧の隅で』と『幽霊』を新品で見つけられてラッキーでした。
本書は表題作が芥川賞受賞作で、ナチスドイツの精神病院が舞台です。ある有名な作品を彷彿とさせるタイトルですが、扱う題材は似ていても全く違う後味を残す作品です。あの時代の狂気じみた陰惨な現実は、私たちから思考力を奪ってしまいがちです。悲惨すぎて目を瞑り、酷い時代だったから起きたことだと思いたくなります。しかし、本書は本当にそれだけなのかと問いを発しているように感じました。患者を『治そう』として、軍に強制された訳でもなく非道にも見える治療を繰り返す医師の姿は、客観的に見た私たちの姿ではないと言い切れるのでしょうか。そんなことを思いました。
日露戦争について調べていた時期に見つけた本です。外交官・小村寿太郎の生涯と日露戦争講和条約、通称ポーツマス条約締結の熾烈な駆け引きを描いた作品です。
吉村昭氏の作品でメジャーな人を題材にしているのが意外でしたが、かなり面白く読めました(吉村氏の作品は未読のものが多いので来年はチャレンジしたいです。余談ですが今年読ん短編集『羆』もお勧めです)。今年は陰鬱な小説やノンフィクションを多く読んでいたので、久々にワクワク手に汗を握りながら楽しめた一冊です。明治時代になり、急ピッチで海外列強に渡り合うために研鑽を積んだ各地の外交官や大使館の名も知られぬ人々の努力がうかがえました。歴史的に海外との交渉などの外交経験が浅い日本と、古くからヨーロッパと渡り合ってきたロシアの外交手腕は天と地との差がありながら、自らの才覚と周囲の助力によって互角以上に戦う小村寿太郎にしびれました。
6位 読書について ショーペンハウアー著
毒舌王ショーペンハウアーとこれからは呼びます。ここまで舌鋒鋭い人がいるのかと驚き半分、苦笑半分で読みました。
今年は哲学に挑戦しようと思い光文社古典新訳文庫をいくつか手に取ったのですが、ショーペンハウアーを読むならこの出版社がお勧めです。他の訳より切れ味が鋭いので。いまネットで本書のような発言をしようものなら一瞬で炎上だというようなかなり過激ともとれる発言が多いです。しかし、その鋭さに惑わされないよう慎重に読んでみると著者の主張が少しずつ見えてきます。例えば、読書とは他人の頭で考えることだという主張は、恐らく読書自体が悪いのではなく原典も確かめずに他者の書いたものを鵜呑みにしたり、自分の意見を持たず他者の言葉ばかり借りることへの警告だと思います。悪書が良書を駆逐することへの警戒や、物書きへの苦言も呈していました。耳に痛い言葉も多いですが、じっくり自分の頭で考えることの重要性を思い出すきっかけになった本でした。
7位 王とサーカス 米澤穂信著
純粋に小説として楽しめた本です。著者の作品はデビュー作からほぼ全て読んでいますが、そのなかでもベスト5に入る作品です。
『さよなら妖精』で初登場した太刀洗が主人公のシリーズで、チベットの王宮で起きた王族殺人事件をきっかけに、様々な謎が現れてくるミステリです。名前は聞くけれどあまり馴染みのないチベットという環境に惑わされ、謎が謎を呼んでいく展開に翻弄されます。正直なところ、著者の作品やミステリという分野を読み過ぎてトリックや伏線をほとんど予測できてしまったのですが、本書はそれなしでも驚きの結末が用意されていてとても印象的でした。
ミステリは社会の病理や価値観のぶつかり合いを抉り出す作品が多いです。宮部みゆき氏などは社会の問題を暴き出す作品を多く書いていて、日本人にとってはこういう作品は珍しくないと思います。しかし、本書は『書くこと』へのジレンマを小説のなかで提示してみせた問題作です。書く人、読む人すべてに訴えかける強いメッセージが心に残りました。
8位 チャパーエフと空虚 ヴィクトル・ペレーヴィン著
今年イチ理解不能な作品です。でも新しい扉を開いてくれたという点で、ベスト10に選びました。
著者はロシアの現代作家で、ロシアで最も権威ある文学賞ロシア・ブッカー賞を受賞した人だそうです。あらすじを説明しても意味がない、という訳の分からない小説です。秘密警察が跋扈する時代のロシアで、精神病院に収容された主人公が現実と夢を行き来するというような内容ですが、どちらが現実でどちらが夢なのか、読んでいるうちにわからなくなる不気味さがあります。所詮この世は胡蝶の夢であり、夢と現実に差はない。現実味の無い荒唐無稽な夢のなかで、世界の実在、自己意識の実在、美と幸福、時間の永遠性についての問答が繰り返され、物語は意外な結末へと収束(あるいは発散)していきます。哲学が好きな方は結構面白く読めるかと思います。来年にこの本について記事にまとめてみる予定です。
9位 告知 久坂部羊著
久坂部羊の本は癖が強いですが、本書もとても衝撃的です。
現代医療や介護の問題を容赦なく抉り出す本書は、著者の作品のなかでもパンチの効いたものでした。
短編集ですが、一話一話読むだけで心理的ダメージを被るので、少しずつ読むのをお勧めします。著者の作品に慣れている方はいいですが、そうでない方にはおすすめしてよいか迷います。本書の凄いところは、『事実だからこそきつい』という点です。誰もが直面する恐れのある病気や介護について、美談ではない露骨なばかりの現実を描けるのはすごいと思います。しかし、読んだらショックを受けると思います。綺麗なものではないとうすうすわかっていても、実際に知ってみるとあまりの凄絶さに絶句しました。しかも、それを仕事にしている人が居て、自分の親族もお世話になったことがあるという衝撃。知ると後悔するけれど、知っておく必要があると思いました。
10位 謝るなら、いつでもおいで 川名壮志著
謝るなら、いつでもおいで: 佐世保小六女児同級生殺害事件 (新潮文庫)
- 作者: 川名壮志
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2018/05/27
- メディア: 文庫
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最後はドキュメンタリーから一冊です。今から10年以上前、ある小学校で女子児童が同級生を殺害するという事件がありました。本書はその事件当時からずっと取材を続けてきたライターの手記のような本です。
私はこの事件があったとき、あまり歳の変わらない子どもが同級生を殺害したという事件をニュースで知り、とても衝撃を受けました。この事件によって少年法の年齢について法改正があったほど社会に影響を与えた事件でした。しかし、今年この本を本屋で見かけるまで、私は事件についてすっかり忘れていました。
なぜ事件が起こってしまったのか。真相というものは誰にもわからないけれど二度と繰り返してはならないのだ、という著者の想いが伝わってきました。被害者の身近に居た著者が、近しい人物を取材して仕事をすることへ苦悩し、報道することの意味に悩み続ける告白は、『王とサーカス』の太刀洗の苦悩と重なりました。書くことで人を傷つけるかもしれないなら、書いていいのだろうか。問い続けるのは苦しいけれど、問い続けることこそ書く者の義務かもしれません。そして読む側・観る側は娯楽のように楽しむのではなく、自分のこととして事件を記憶し、考えて生きていくことが大切なのかと思いました。加害者を一方的に中傷したり、被害者をただ悲劇に仕立て上げることなく公正に観ようとする著者の姿勢に共感できる本です。おすすめしにくい内容ですが、臭いものに蓋をするだけではなく、向き合うことの大切さを感じた本なので選びました。
以上、今年のイチオシ本10選でした。
今年は難航している記事もいくつかありブログ運営は苦戦もしましたが、読書会に参加するなど新たな刺激もあり、たくさんの本と出会えたいい年でした。選外になりましたが、おすすめの本も以下に載せておきます。
末筆となりましたが、皆様良いお年をお迎えください。
※ベスト10選外 お勧め本
今年読んだ本ではないので選びませんでした。ようやく文庫化して読みやすくなったので、帰省のお伴にでも。
人の心は読めるか?──本音と誤解の心理学 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
- 作者: ニコラス・エプリー,波多野理彩子
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2017/05/09
- メディア: 文庫
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ハヤカワノンフィクションの中で、今年一番面白かった本です。数学や物理の話よりとっつきやすくておすすめです。
京極好きを拗らせて読みました。民俗学初心者でも読みやすい本です。
中国の独裁者、毛沢東の壮絶な話です。ここに書かれていることが全て真実かはわかりませんが、一部でもすさまじいです。
【知の扉】ハヤカワNF文庫を推したい
今年はノンフィクションをよく読みました。
小説も好きですが、未知の領域への興味を掻き立てるノンフィクションもワクワクします。学生の頃、教科書はつまらなかったけれど資料集の小ネタは結構好きで、学術系のノンフィクションを読むと当時を少し思い出します(※本記事では新書や事件系のノンフィクションではなく、学術系のノンフィクションについて語ります)。
色々ありますが、わたしが特に好きなのは『ハヤカワNFシリーズ』です。
ハヤカワ文庫というとミステリやSF(特に海外小説)のイメージが強く、そちらも古典から新しい作品まで名作揃いです。しかし、ノンフィクションシリーズはあまり知られていないような気がします。ハヤカワの棚で、背表紙の上部がオレンジがかったもの(一部装丁が違うものもあります)で、本屋で「見たことある」人は多いかと思います。
ですがなんといっても、学術系といえば大御所の岩波書房に流れてしまう人が多いですし、読みやすさでいうとちくま文庫などが売れているような気がします。
クマにあったらどうするか: アイヌ民族最後の狩人 姉崎等 (ちくま文庫)
- 作者: 姉崎等,片山龍峯
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2014/03/10
- メディア: 文庫
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(※画像は参考です)
岩波は圧倒的古典蔵書量、ちくまは絶妙な親しみやすさが魅力だと考えると、ハヤカワNFシリーズの魅力は何といっても以下の点に尽きると思います。
・多彩さ
・堅さ
・奇想天外さ
この3つを両立させる印象的な本が多く、「外れにくい」ところが気に入っています。
おすすめをいくつか挙げてみると、ジャンルの広さがわかります。
ホーキング、宇宙を語る―ビッグバンからブラックホールまで (ハヤカワ文庫NF)
- 作者: スティーヴン・W.ホーキング,Stephen W. Hawking,林一
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1995/04/01
- メディア: 文庫
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異端の数ゼロ――数学・物理学が恐れるもっとも危険な概念 (ハヤカワ文庫NF―数理を愉しむシリーズ)
- 作者: チャールズ・サイフェ,林大
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2009/05/05
- メディア: 文庫
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人の心は読めるか?──本音と誤解の心理学 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
- 作者: ニコラス・エプリー,波多野理彩子
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2017/05/09
- メディア: 文庫
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あなたの知らない脳──意識は傍観者である (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
- 作者: デイヴィッド・イーグルマン,大田直子
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2016/09/08
- メディア: 文庫
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ずる――?とごまかしの行動経済学 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
- 作者: ダン・アリエリー,櫻井祐子
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2014/09/10
- メディア: 文庫
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音楽嗜好症: 脳神経科医と音楽に憑かれた人々 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
- 作者: オリヴァー・サックス,大田直子
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2014/08/22
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デザイン思考が世界を変える (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
- 作者: ティム・ブラウン,Tim Brown,千葉敏生
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2014/05/10
- メディア: 文庫
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まだまだたくさんあるので、興味のある方は以下をどうぞ。
ハヤカワオンラインHP
https://www.hayakawa-online.co.jp/shopbrand/genre_001010/
物理や数学、宇宙論、自然科学系など理系分野の本も多いですが、社会学、経済学、心理学など幅広い分野を網羅しているのが魅力です。
今日から実行できそうな実践的な本も多く、新書系が好きな人も楽しめるラインナップだと思います。
それといつも感心するのが、タイトルの洒脱さです。
「○○をやりなさい」とか「成功を呼ぶ○○の法則」「○○してはいけない」みたいな主張の強すぎるタイトルがわたしは苦手で、そのため新書はほとんど読んできませんでした。でもハヤカワノンフィクションは「何だろう?」と思わせる魅力的なタイトルが多く、棚から手に取りたくなるような遊び心のあるものが多いです。
しかも、中身は結構硬派なものが多いので、安心して読めるのもいいです。
新進の科学者やホーキング博士のような大御所など、基本的にその分野の学者の方や専門のライターの方が書いており、巻末の参考文献も凄まじい量です。科学系の本だと怪しげなものも偶に出回っているので、その点ハヤカワノンフィクションシリーズは信頼感が高くて好きです。
最後の奇想天外さについては、おすすめを挙げてみればわかります。
0と1から意識は生まれるか――意識・時間・実在をめぐるハッシー式思考実験(ハヤカワ・ノンフィクション文庫) (ハヤカワ文庫NF)
- 作者: 橋元淳一郎
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2009/10/30
- メディア: 文庫
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変な学術研究〈1〉光るウサギ、火星人のおなら、叫ぶ冷凍庫 (ハヤカワ文庫NF)
- 作者: エドゥアールロネ,高野優,´Edouard Launet,柴田淑子
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2007/05/01
- メディア: 文庫
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ブラックホールで死んでみる――タイソン博士の説き語り宇宙論(上) (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
- 作者: ニール・ドグラース・タイソン,吉田三知世
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2017/01/24
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『0と1から意識は生まれるか』はわたしのおすすめ本ベスト10に入る好きな本です。東進ハイスクールの塾講師(物理)の方が書いているのですが、正直塾講師より作家のが向いていると思うくらい面白かったです。厳密な科学ではない思考実験ならではの自論がさく裂していて、「空想科学読本大人版」みたいな感じでした。特に「葉緑体人間は可能か」という章は読みやすいので色んな人に読んでみてほしいです。しかし、残念ながら絶版ですので、もし古本等で見かけたら手に取ってみてください。
『変な学術研究』はもっと肩の力を抜いて楽しめる1冊です。最近有名になってきたイグ・ノーベル賞のような研究が満載で、思わずツッコミたくなります。1か2か、どっちかは忘れてしまったのですが、「恋愛とは強迫性障害である」という仮説を立証する研究の話が個人的には面白かったです。
『ブラックホールで死んでみる』はショッキングなタイトルを見て購入した本です。ブラックホールの話かと思って読んでみると、宇宙についてのさまざまなトリビアを語るエッセイ集で、堅苦しくなく読めました。タイトルについての考察は下巻のほうで、上巻よりダイナミックになる話に夢が膨らみました。タイトルがセンセーショナルですが、意外と宇宙論、天文学への入門書としても楽しめる気がしました。
今年ももう数日で終わってしまいます。
やり残したこと、読めなかった本などたくさんありますが、来年も色んな本に触れられるといいなと思います。
未知の分野への扉を開くノンフィクション、帰省のお伴にでもいかがでしょうか。
【五十音順・おすすめ小説紹介】42冊目 メアリー・シェリー
おすすめ本紹介、42回目です。
この記事では著者の五十音順に、わたしのおすすめ本を紹介しています。
今回はメアリー・シェリー氏。
フランケンシュタインというと人造人間という怪物のイメージが強いですが、実はこの名前は怪物を生み出した“博士”の名前です。
メアリー・シェリーという作家自身より『フランケンシュタイン』という名が一人歩きしていますが、元となった小説はなかなか文学的な作品ではじめて読んだとき意外に感じました。
天才科学者フランケンシュタイン博士は研究の末に、ついに人造人間を生み出すことに成功します。しかし誕生した生物は人に似ない醜悪な姿をしており、博士は嫌悪のあまり彼を見捨ててしまいます。『怪物』は知性を持ち、感情を持つ人間と似た生き物でありながら、その異質さと醜さによって他の人間からも拒絶され続けてしまいます。『怪物』が度重なる拒絶に傷つき、次第に孤独と絶望に飲み込まれて博士への復讐者となっていく様子と終盤の博士との問答が心を打つ作品です。
生みの親に見捨てられた悲しみと戸惑い、他人からの拒絶に合う恐怖、そして自分の同胞が存在しない圧倒的な孤独を味わう怪物は、人間よりも人間らしいように感じました。クローン技術など、生命の倫理を問われる技術への警鐘的作品ともいわれますが、やはりこの作品の魅力は『人間の孤独』の描き方であると思います。
他人に許容され、愛されたいという欲求が何一つ満たされないこと、孤独を味わい続けることがどれほどの苦悩か。他人と違うというだけで排斥される殺伐とした社会の生きづらさを暗示しているようにも読めました。
読んでいると哀れな怪物に感情移入したとしても、現実の自分はどうでしょうか。異質なもの、醜いもの、理解できないものを見ようともせず、理解しようと思わず無自覚に排斥してはいないでしょうか。また、自分の都合で他人を振り回し、見捨てていないとはいえるでしょうか。
小説は極端な設定だけれど、日常に当てはめてみると“よくある話”であるかもしれません。
【五十音順・おすすめ小説紹介】41冊目 佐藤愛子
おすすめ本紹介、41回目です。
この記事では著者の五十音順に、わたしのおすすめ本を紹介しています。
小説ではなく、エッセイです。
今回は佐藤愛子氏。
振り回される人へのエール、あるいは叱咤。
佐藤愛子氏は、実をいうと作品をあまり読んだことがありません。
偶々手に取ったエッセイが何とも面白く、有名どころの『血脈』などを読まずに気づいたらエッセイばかり読んでいました。
『九十歳。何がめでたい』で話題を呼んだことは記憶に新しく、センセーショナルなタイトルは何でも長寿がめでたいという風潮に一矢報いていました。今回紹介するエッセイも、やはり持ち味はキレのよすぎる舌鋒とユーモアで、なんだか勇気が出てくる本でした。
壮絶な人生経験のなせるわざなのか、それとも女傑と評される気性のおかげなのか、歯切れよく語られる言葉は力強く、それでいて説教臭さや押しつけがましさをあまり感じさせません。しかし意外にも、本人は自分を『女傑』とは思っていないそうです。
本のなかで「破れかぶれ」と自分を評していた愛子氏。自分は勇敢で決断力に満ちているのではなく、短気のせいで我慢ならないことが多く、結果果断な人と思われるのだというようなことを言っていました。
「破れかぶれの行動だって、勇敢に見えることがある」
特別に気丈な人だから強いわけではない。自分の思うように行動してみればよい。そんなエールを貰える本でした。
愛子氏ほど果断に行動することはすぐにはできないけれど、言い訳をしない生き様は爽快で、読んでいて少し羨ましくなりました。
最後に、もう1冊おすすめを書いておきます。
タイトルが秀逸で、すぐ手に取ってしまいました。率直でドキリとするタイトルが目をひく1冊です。