本の虫生活

おすすめ本の紹介などしています。著者をア行からワ行まで順番に。

【五十音順・おすすめ小説紹介】42冊目 メアリー・シェリー

おすすめ本紹介、42回目です。
この記事では著者の五十音順に、わたしのおすすめ本を紹介しています。
今回はメアリー・シェリー氏。

フランケンシュタイン (新潮文庫)

フランケンシュタイン (新潮文庫)

 

 

フランケンシュタインというと人造人間という怪物のイメージが強いですが、実はこの名前は怪物を生み出した“博士”の名前です。

メアリー・シェリーという作家自身より『フランケンシュタイン』という名が一人歩きしていますが、元となった小説はなかなか文学的な作品ではじめて読んだとき意外に感じました。

 

天才科学者フランケンシュタイン博士は研究の末に、ついに人造人間を生み出すことに成功します。しかし誕生した生物は人に似ない醜悪な姿をしており、博士は嫌悪のあまり彼を見捨ててしまいます。『怪物』は知性を持ち、感情を持つ人間と似た生き物でありながら、その異質さと醜さによって他の人間からも拒絶され続けてしまいます。『怪物』が度重なる拒絶に傷つき、次第に孤独と絶望に飲み込まれて博士への復讐者となっていく様子と終盤の博士との問答が心を打つ作品です。

 

 生みの親に見捨てられた悲しみと戸惑い、他人からの拒絶に合う恐怖、そして自分の同胞が存在しない圧倒的な孤独を味わう怪物は、人間よりも人間らしいように感じました。クローン技術など、生命の倫理を問われる技術への警鐘的作品ともいわれますが、やはりこの作品の魅力は『人間の孤独』の描き方であると思います。

他人に許容され、愛されたいという欲求が何一つ満たされないこと、孤独を味わい続けることがどれほどの苦悩か。他人と違うというだけで排斥される殺伐とした社会の生きづらさを暗示しているようにも読めました。

 

読んでいると哀れな怪物に感情移入したとしても、現実の自分はどうでしょうか。異質なもの、醜いもの、理解できないものを見ようともせず、理解しようと思わず無自覚に排斥してはいないでしょうか。また、自分の都合で他人を振り回し、見捨てていないとはいえるでしょうか。

 

小説は極端な設定だけれど、日常に当てはめてみると“よくある話”であるかもしれません。