zarameのブログ

おすすめ本の紹介などしています。著者をア行からワ行まで順番に。

【おすすめ本2018】24冊目 小川洋子

おすすめ本紹介、24回目です。
この記事では著者の五十音順に、わたしのおすすめ本を紹介しています。
今回は小川洋子氏からこちら。

 

博士の愛した数式 (新潮文庫)

博士の愛した数式 (新潮文庫)

 

 読んだらすこし、数学が好きになる作品。

 

2004年に第一回本屋大賞を受賞し、一躍有名になった小説です。

「ぼくの記憶は80分しかもたない」博士の背広の袖には、そう書かれた古びたメモが留められていた。

 事故の後遺症により記憶が80分でリセットされ、1975年以降の記憶を持つことができない老数学者の「博士」と、シングルマザーの家政婦とその息子の3人が織りなす、暖かくすこし切ない日常の物語。

  

この小説は、2つのテーマに沿って読み解けます。それが

・数式

・家族

です。

 

数式を通して世界を認識する博士の、子どものように純粋な数学への愛情が全編を通して描かれています。理系や学術的な話が多いかというと、意外と少なかったなと感じました。記憶障害を抱える博士の葛藤や、数学という学問に焦点を当てた作品なのかと思っていましたが、純粋に小説として楽しむ作品でした。

数式は博士の言語であり、世界を認識するためのツールとして表現されています。記憶を保持できず、新しい人と人間関係を積み上げることができない博士と、家政婦と息子の3人が、数式を通してつながることができる。重たく苦しい現実から少し離れて、誰でも平等に共有できる数学の世界が、ちょっと好きになりました。

 

もうひとつのテーマとして挙げた「家族」について。博士と家政婦とその息子の3人組が、日常を過ごすなかで交流し、疑似家族のような関係になっていくのが見所です。10歳の息子の算数の問題を一緒に解いてくれる博士は、急かすことなく、答えを教えるのではなく、子ども自身がわかるように、数式の美しさに気づくようにやさしく見守り導いてくれます。自分の子ども時代、こんな素敵な先生が居たらよかったのにと羨ましく思いました。

 

中盤以降、物語の転換点はありますが、大きな出来事もなく数式をスパイスにした穏やかな日常が積み重なっていく静かな作品でした。気疲れしたり、落ち込んだときにちょっと優しい気持ちになれる1冊です。わたしは大人になってからのほうが胸に迫りました。でも、子どものときに読むと、すこし数学が好きになるかもしれません。

昔読んだという方は、もう一度読んでみると違う感想になると思いますよ。

 

 

※最後に、数学についてもっと読みたい方へおすすめ

 数学界きっての難問「フェルマーの最終定理」を巡る数学者たちのノンフィクション。学術的な話が知りたい方へおすすめ。

フェルマーの最終定理 (新潮文庫)

フェルマーの最終定理 (新潮文庫)

 

 

博士の愛した数式」著者小川洋子氏と、作品の助言を行った数学者藤原正彦氏の対談集。もっと作品の裏側を知りたい方へおすすめ。

 

世にも美しい数学入門 (ちくまプリマー新書)

世にも美しい数学入門 (ちくまプリマー新書)

 

 

 あとはマンガからひとつ。「明治失業忍法帖」(全11巻)に収録されている「冷蔵庫の中に象」という連作短編集。単独の単行本にはなっていないので読みにくいですが、数学の話をマンガで気軽に楽しめる作品なのでおすすめ。

 

明治失業忍法帖 1―じゃじゃ馬主君とリストラ忍者 (ボニータコミックスα)

明治失業忍法帖 1―じゃじゃ馬主君とリストラ忍者 (ボニータコミックスα)