朝晩急に冷え込むようになってきました。
読書の秋も冬へと移行していますが、寒いときのほうが難しくて長い本を読む気になります。
冬こそ暖かい部屋でゆっくりと読書を楽しむチャンスかもしれません。ココア片手にじっくりと読みたいです。
今年は読書会や本まつりなど、読書系のイベントに参加したり、作品の聖地巡礼をしてみたり、ブログを書いたりなど超インドア派の私としてはかなり精力的に働いた(ような?)気がします。本当は今年中に本紹介を半分くらい消化したかったですが、文章を書くって難しいですね。
ひとつ誤算だったのは、ブログ更新についてでした。
ゴールデンカムイ関係の記事と、京極夏彦の百鬼夜行シリーズ関連の記事が難航しており、年内に書ききることが難しそうです。
そんなに読んでいる方はいないと思いますが、もし待っている方がいたらすみません。鋭意執筆中ですので少々お待ちくださいませ。
それで本題ですが、今年読んだ本・マンガについてちょっと一言。
近代もの・妖怪ものフィーバーの予感がしました。
少女マンガ界隈はほとんどわからないですけど、少年・青年マンガ界だとゴールデンカムイの台頭、ジャンプ系だと鬼滅の刃なんかは人気だし、呪術廻戦はまだ序盤ですが大手になりそうな予感があります。
もともと時代ものや妖怪ものは、世代に関わらず堅調な人気があると思います。アクションあり、謎あり、友情・仲間あり、魅力的な敵ありの上、独特の世界観や衣装などワクワクする要素が多いですよね。
でもなんとなく今のブームって、系統が違うような気がします。
鬼滅の刃の独特な台詞回しや呪術廻戦の問いかけのようなモノローグ、ゴールデンカムイの繰り返される象徴的描写など、印象的な描き方が読者を掴んでいるように思います。単発のブームでは終わらないエネルギーを感じませんか?あと、ゴールデンカムイについて少し驚いたのは、時代を意識して描いているところです。エンターテイメント性だけでなく、当時の帝国陸軍、日露戦争、帝政ロシアの揺らぎなど、激動する歴史を詳細に設定に練り込んで描く緻密さに驚きました。
また、本の分野では昨年直木賞候補作となった上田早夕里氏の『破滅の王』、今秋文庫が出たばかりの柳広司氏の『幻影城市』がともに、第二次世界大戦以降の満州、関東軍防疫給水部隊、通称“七三一部隊”を題材に入れた作品を書いています。遠い昔ではない、現在と地続きの時代を描く作品、しかも満州を書いている作品が続くといのは意外でした。
明治から大正、昭和の時代を描いた作品のブームがじわりと来ているような気がします(※あくまで私見です)。
以上、雑談でした。
最後に近代・妖怪ものブーム到来へ向けて、イチオシ本とマンガを一挙紹介します。
*マンガ
①鬼滅の刃
『鬼』を題材にしたマンガと聞き、気になって読みました。思っていたのとは違いましたが、大正ロマンをほんのり感じるテイスト、テンポの良い台詞回し、笑いとシリアスのバランスがよいマンガでした。『鬼』となった妹を助けるために鬼退治をする、というアンビバレンス、憎み排除するべき鬼に情けをかける主人公。組織のなかの異端として生きながら成長するのは少年漫画等でよくある構成ですが、王道っぽさが出ないのは鬼(敵)側の哀しさが際立つ描き方によるのでしょうか。
少年漫画の王道のように見えてそうじゃない、絶妙な味わいがあるマンガです。
②呪術廻戦
最近ハマりたての作品。ワールドトリガー再開に合わせて数年ぶりにジャンプを購入し(ちょっと照れくさくて買いにくかった)、タイトルに興味を持ってまんまとやられました。いま2巻しか出てないのでハマるなら今がチャンス。
人から流れ出た負の感情、呪いから生まれる災厄を祓う呪術師たちの物語。主人公は呪いを身体に取り込み、忌避される存在となりながら呪術師への道を歩みます。ダークヒーローものと言うのでしょうか、正統派ヒーローでないけど性格は王道、ってところがいいですね。
ネタバレはあまりしない主義ですが、京極夏彦『魍魎の匣』を読んだ人は2巻で唸るはず。2巻の謎が気になった方はぜひ魍魎の匣を読んでみてほしい。
妖怪・異界系マンガで十種の神宝を出すなんて作者は本気ですね。好きです。
さんざん他の記事で書いたので、紹介は特にしません。
キロランケとウイルク、鶴見中尉の記事を書こうとしてるのに本誌の爆弾が大きすぎて大幅改正を迫られています。
④応天の門
夢枕獏氏的な世界観かな、と思って読んでみてびっくり。ガチガチの合理主義な話でした。菅原道真の論理的な謎解きが楽しめます。
鬼や怨霊のたたりなど、魑魅魍魎がまさに蔓延る世界を、主人公菅原道真が痛快に解き明かしていく探偵もののような楽しさがあります。一番怖いのは宮廷に巣食う人間たち、というどろどろした権力闘争の描写もスリリングです。
⑤明治失業忍法帖
明治失業忍法帖 巻ノ1―じゃじゃ馬主君とリストラ忍者 (ボニータコミックスα)
- 作者: 杉山小弥花
- 出版社/メーカー: 秋田書店
- 発売日: 2011/05/16
- メディア: コミック
- 購入: 1人 クリック: 2回
- この商品を含むブログを見る
幕末から明治に移り変わる時代。武士、町人、商人、外国人、男、女、子どもたち、それぞれの葛藤や煩悶を繊細に描いたマンガです。
主人公は元忍と開化に浮かれる女学生のコンビですが、他にも警察や陸軍、政府に反感を持つ攘夷浪士、居留区に暮らす外国人など、様々な人の視点からも描かれていて、明治に入った江戸を散歩しているような臨場感があります。新しい知識や技術が入ってきたことで活気ずく街や人、古くからのものが壊され追い詰められる人、明治の世の明るさと暗さが同時に伝わってきました。自信を持っておすすめできるマンガです。前に記事を書いたのでよければ併せてどうぞ。
ちなみに杉山氏もゴールデンカムイのファンらしいです。
⑥十十虫は夢を見る
こちらは大正ロマン満載の作品。乱歩の世界のような、少し妖しく幻想的な雰囲気とホームズのようなミステリに引き込まれます。
主人公は他人の『夢』に現れ、様々なお告げをしてしまうという体質の少年です。読書好きで学校はさぼりがちなエリート高校生で、自分では全く覚えていない『夢』のせいで次々と事件に巻き込まれます。この時代ならではのトリックや謎が満載なので、ミステリ好きにもおすすめしたいです。『明治失業忍法帖』と併せて読むと、時代の流れを感じて読みやすかったです。
*本
①魍魎の匣
近代もの・妖怪ものというなら一度は読んでみてほしい京極夏彦。
『魍魎の匣』は内容がハードだし、京極作品の独特さは合わない人もいるかとは思うのですが、他の方の感想を聞いてみたい作品です。先ほども書きましたが、『呪術廻戦』読んだ方でこの本を読んだ方は、かなりニヤニヤしませんでしたか?『王とサーカス』を読んで『鉄鼠の檻』を思い出したように。
ちなみに私は、この本を読んだ夜は眠れませんでした。
②しゃばけ
かわいい妖怪ものならこれ。
おどろおどろしい怪物ではなくて、日常に混じり、人と同じ世界を生きるキュートな妖怪が活躍する本です。癒されたいならこの本だと思います。
お菓子が大好き、それ以上に若だんな大好きな妖怪たちが江戸を自由に駆け回る様子がとってもかわいいです。
③陰陽師
ショート・ショートの怪談集、という趣があります。
平安時代の魑魅魍魎が幅をきかせていた時代を想像させる幻想的な作品です。実際にこんな風に妖怪や怪異がすぐそばにある日常を、一度は味わってみたいです。沙門空海シリーズはいつか映画化していましたが、映像より本のほうが幻想的な感じがします。
④破滅の王
歴史SFもので、昨年イチオシした1冊です。
上田氏のSFがすごく好きで、他の本も隙あらば布教していますが、これは歴史ものの風格もあって見事でした。歴史ものを書いたのが初めてとは全然思えません。
満州事変以降の中国、上海自然科学研究所を舞台に架空の細菌が各国に波乱をもたらすという、ハードSFです。しかし、当時の歴史と満州、関東軍防疫給水部隊と聞くと、あながちSFとも言い切れない現実味を感じて薄ら寒い心地がしました。
⑤幻影城市
最近本屋で見かけて買いました。
柳広司氏の本はつい買ってしまうのですが、これもまた一癖ある作品でした。
あまり書くとネタバレになってしまうのですが、関東軍の話がでてくるとは思っていなくて驚きました。満州で映画づくりを夢見る者たちと、周辺を取り巻く異様な空気。柳氏は戦時中、近代歴史の暗さを書かせるならやはりぴか一です。
最後までお読みいただきありがとうございました。