zarameのブログ

おすすめ本の紹介などしています。著者をア行からワ行まで順番に。

【おすすめ本2018】22冊目 冲方丁

おすすめ本紹介、22回目です。
この記事では著者の五十音順に、わたしのおすすめ本を紹介しています。

今回は冲方丁氏からこちら。

 

天地明察(上) (角川文庫)

天地明察(上) (角川文庫)

 

 冲方丁氏というと、ライトノベルで有名な作家だと思っていたので、この作品を初めて読んだときにかなり驚きました。

 

歴史ものによくある硬さを感じさせない文章は読み手を選ばず、すんなりと読めるものだと思いましたが、内容はかなり本格的で「改暦」というあまりなじみのないテーマを扱っているのにぐいぐいと引き込まれあっという間に読み終わりました。

 

主人公は碁をもって徳川家に仕える四家の一つ、安井家の長男である春海は、碁打ちとしての職務にいまひとつ打ち込めないまま日々を過ごしていた。そんな主人公春海が唯一心惹かれていたのが「算術」。江戸時代以前、日本で独自に発達した数学「和算」です(ねずみ算や 鶴亀算などは聞いたことがあるでしょうか)。当時は数学の問題が書かれた絵馬を「算額」といい、さかんに神社仏閣に奉納されていた。和算の歴史について、以下のHPに詳しく載っているので気になる方はどうぞ。

www.ndl.go.jp

春海は金王八幡で算額を書き写しているうちに、次々と正答を書いていく「関」という人物に興味を持つようになる。謎の人物を追いかけ、算術に心奪われた春海が情熱のまま突っ走り、ときに空回ったりする様子は、失敗を恐れず夢中に挑戦する若さが感じられます。

ある日、そんな春海の状況は老中酒井忠清からの命令によって一変してしまう。日本全国の緯度を計測するという大がかりな計画の遂行者に任命された春海は、後ろ髪を引かれながらも新しい旅に乗り出していく。

 しかし、その旅すら大きな計画の一部でしかなかったことをのちに春海は知ることになる。その計画こそ、本書の主題である「改暦」プロジェクトだった。

 

 

江戸時代の一大プロジェクト「改暦」や、天文、和算、碁などそれぞれの人々の挑戦や苦悩、喜びが描かれているのが本書の魅力の一つだけど、一番心に残るのは、春海の挫折と苦悩、そして成長の軌跡でした。

最初は家の役目である碁に興味が持てず、子どものように算術に夢中になっていた主人公が、失敗をしてより強く算術を意識するようになる。緯度計測の旅で天文という新しい世界を知り、さらに「改暦」という大事業に踏み込み、複雑で多様な問題に直面して苦悩する。好奇心に突き動かされ、夢中になって取り組むからこそ、春海に降りかかる試練や相次ぐ失敗がより重く感じられます。しかし、何度失敗しても、恥をかいて信用を失っても、諦めずにまた手を伸ばし、少しづつ成長する春海の姿に何度も涙腺がゆるみます。

 

 

挑戦することにためらっている人、夢中になるものが見つからない人、失敗して落ち込んでいる人にはぜひおすすめしたい作品です。夢中になれるものがある、というのが酷く羨ましく眩しく思える小説でした。

 

 

他にも、著者の本で個人的に好きなのが以下の2つです。こちらもよろしければ。

光圀伝 (上) (角川文庫)

光圀伝 (上) (角川文庫)

 

 

 

はなとゆめ (角川文庫)

はなとゆめ (角川文庫)