【グラフで遊ぶ】五条悟の無下限呪術
2020/11/13更新
アニメ放送記念の一部修正&追記。
約2年前に書いていた記事と思うと、時の流れを感じますね。アニメ放送記念に、過去記事を少し修正したので更新しました。
***
今年秋、ゴールデンカムイ以来のやばいマンガにハマってしまいました。
週間少年ジャンプで連載中、12月に単行本3巻発売予定のマンガ『呪術廻戦』。
主人公は凶悪な呪いの王『宿儺』の指を飲み込んでしまい死刑にされかかった少年。宿儺の指をすべて集め、自身に取り込むことを条件に刑の執行猶予をつけられ、呪術師を育成する学校である呪術高専へ入学し成長していくというストーリーです。
まだ2巻ですが既に気になる伏線が散りばめられており、今後の展開が読みにくいストーリー構成と耳に残る台詞が特徴的でぐいぐい引き込まれるマンガです。
本題はここからです。
まだ読んでない方は2巻のネタバレになるのでご注意ください。
無限って結局なに??
2巻を一気読みしたあと「???」となった方はきっとわたしだけじゃないはず。
それもそのはず、無限級数とは高校数学三年理系が習う『数Ⅲ』の内容です。
文系選択だったらそもそも習ってないです(よね?)
本記事では五条悟の能力について、数学の思考実験もどきをして考えてみようと思います。
目次
①近づくほど遅くなる⇒距離の微分は速度
②吹き飛び続ける漏瑚⇒速度は無限大に発散
③トぶ五条悟⇒術式を自分に適応する?
④おまけ⇒モノを吸い込むような空間の動き
※これは考察というより五条悟を題材にした遊びなので、暇つぶしにでもなれば幸いです
では、①について。
①近づくほど遅くなる⇒距離の微分は速度
2巻コメントで作者は以下のように言及しています。
アキレスと亀の話については、下記のサイト等を見るとわかりやすいと思います(いきなり丸投げ)。
無限の先にある魅力。アキレスと亀のパラドックスとその論破法を解説 | アタリマエ!
アキレスと亀のパラドックス①無限数の点と無限回の試行回数 | TANTANの雑学と哲学の小部屋
アキレスと亀、のままだと言語化しづらいので以下では五条の術式は『対象に無限回の運動をさせる』ことと仮定して考えてみます。
問題をわかりやすくするため、ちょっと条件をつけて検証していきます。
例⓵ゆっくり歩いたとき: 五条と漏瑚の距離が10mで、漏瑚が毎秒1mで近づいているとします(簡単にするため、五条は止まっていると仮定します)。
y=t秒後の五条・漏瑚間距離(m)、t>0とすると下のグラフのようになりt=10のとき、y(二人の距離の概算)は0になり漏瑚は五条に追いつきます。
☛10秒後に恋人つなぎ
ついでにもう一つ。
例⓶走ったとき: 五条と漏瑚の距離が10mで漏瑚が初速1m/s、加速度1m/s²で近づいているとします(五条は止まっている場合)。
y=t秒後の五条-漏瑚間距離(m)、t>0とすると下のグラフのようになりt=4のときyは0になり、漏瑚は五条に追いつきます。
☛4秒後に恋人つなぎ
以上の2つの例で示したように、宇宙の彼方というような遠すぎる距離でないなら有限の距離は有限の時間で進めば辿り着けます。
しかし実際に、14話の問題の恋人つなぎのシーンでは手を出して止まっている五条に漏瑚は近づけません。 なので近づくほど遅くなり“触れない”状況をグラフで表せないかと色々と試行錯誤してみました。
そこで梓暮|旭(@disucord124)さまのツイートに着想を得て作成したグラフがこちらです。※掲載には許可を頂いています
あくまで個人的にだけど、五条先生の術式はこんなイメージしてる。
— as (@discord124) 2018年11月23日
近づくものはどれだけいっても"近づく"(収束する)だけで交わらないし、この効果(術式)が反転するとどんどん"離れていく"(発散する)ってことだ。だからあの14話の時、術式反転の『赫』で漏瑚さん飛んでいったんだねって思ってる。 pic.twitter.com/IJgSLpPdSE
☛t→∞でも恋人つなぎできず…(残念)
ある場所から有限の距離にたどり着くには、例①②のように速度を設定しておけば10秒後、4秒後のように有限の時間が算出されます。あて推量ですが、五条悟の無限は時間をt→∞に発散させることではじめて成り立つのかもしれません。意味わからないですが。
また、このグラフはもう一つの事象を示唆しています。それが『近づくほど遅くなる』謎です。
距離(m)の微分は速さ(m/s)
という話を聞いたことはあるでしょうか。
速さというと、移動距離(m)÷時間(s)で算出するイメージがあるかと思います(例:50メートルを8秒で走ったとき、速さは6.25m/sとなる)。
上の計算は、ある距離を通過した平均の速さを求めています。
しかし、高校数学or物理では時間tで表される距離yを微分することで速度を求めることができます(この手法は、割る時間を限りなく0に近づけることで平均ではない瞬間の速度を求められる利点があります)。
ある時間t₁とt₂(0<t₁<t₂)において先程のグラフを微分したときの速度をv₁、v₂とすると、グラフは以下のようになります。
青(v₁)と赤(v₂)では、赤のほうがグラフの傾きが小さい=速度が遅いということがわかります。
このように、時間tが大きくなる(=時間が経過する)ほど漏瑚のスピードは遅くなり、最終的に止まっているのと同じくらい遅くなってしまう、ということがグラフで表現できました。
数式やグラフはあくまで一例ですが、収束する関数であればy-tグラフの微分はすべて同じようになると思います。
では、次のテーマへ。
②吹き飛び続ける漏瑚⇒速度は無限大に発散
今度は、恋人つなぎ後の漏瑚が吹き飛ばされたときのことを考えます。
2話で宿儺もくらっていた『ただ呪力で強化しただけじゃない』打撃です。これを<ケースI>とします。ちなみにこの攻撃を術式反転と仮定しました。
わかりやすくするため、①で使用した式を『通常の術式』とした場合、反転したグラフは下図のようになります。
すると見た通り、時間が経てば経つほど急激に距離が伸び加速していることがわかります。
<ケースI>五条の拳に適用
五条のパンチのスピードが上のグラフのようになるとすれば、普通の人間の運動とは思えないような加速し続ける打撃が打てます。それが速いだけではない重いパンチと考えます(注 敵に当たったら呪力をOFFにするとかしないと加速し続けて本人も止まらなくなっちゃう気がしますが、最強なので心配ないでしょう)。
次が術式反転『赫』です。これを<ケースII>とします。
基本的にケースIと原理は変わらないと仮定しましたが、原作でわざわざ描写をわけている以上、何か意味があるかもと思い考えてみました。
<ケースII>漏瑚本体に適用
漏瑚本人が、グラフのような運動をすると仮定するとこの技の怖さが見えてきます。
ケースIの場合、呪力のOFFで運動を止めることができます。しかし、もしグラフのような運動を漏瑚がさせられるとしたら、呪力で相殺などしない限り永遠に止まれないんじゃないでしょうか。
14話を見てみると『赫』をくらった漏瑚は木をなぎ倒しながら吹っ飛んでいます。猛スピードで吹き飛ばされているようで、それまでの殴られた描写とは全く違っています。
加速し続けるスピードで吹き飛ばされ続けているので、障害物にぶつかっても自分が壊れない限り止まれない。『赫』とはそういう攻撃なんじゃないでしょうか。さすが最強、怖い。
③トぶ五条悟⇒術式を自分に適応する?
次は、五条が度々行っているテレポーテーションの謎を考えてみます。
実はこれも②のグラフで考えられるのではないかと思い検証してみました。
<ケースⅢ>五条本人に適用
平たく言うと、漏瑚がくらった『赫』を自分に適用する感じです。
五条の瞬間移動とは『ものすごく加速する高速移動』と仮定してみます。
説明のため先程のグラフを少し加工しました。
図のように、係数aを大きくするほど曲線のカーブは急になる、つまり加速するスピードが急になります。赤のグラフのように急な加速で移動していれば、それは他の人からは瞬間移動と同じに見えるかもしれません。
術者である自身の運動なら、漏瑚のように為すすべなく吹き飛ばされることはなく、目的地に着くように呪力OFFのタイミングを調整したり、飛ぶ速さを調整できると思います。ただ、推測ですがかなり呪力を消費しそうですね。
④おまけ⇒モノを吸い込むような空間の動き
2巻の作者コメントを考えたのですが、さっぱりお手上げでした。
五条の術式の無限級数はファンタジーで繰り返される足し算の中に本来ない0と0を分割した“何か”が含まれます。だから無下限。
五条の無限は、この“何か”のお陰でモノを吸い込むような空間の動きが作れるそうです。
記事では書きませんが0を割るという現象について気になる方は、下記のサイトの説明がわかりやすかったので載せておきます。
捉えどころのない問題ですが、イメージとして以下で挑戦してみます。
とりあえず『モノを吸い込むような空間の動き』が実際に起こるとした場合、現実で当てはまりそうな現象というとあるものが思い浮かびます。
ブラックホールです。
ブラックホールについては専門家ではないので語れないのですが、高校物理くらいの知識を前提にするとブラックホールが周囲のモノを吸い込むのは非常に強い重力を持つためと考えられます。
重力について考えるとき、万有引力と何が違うのか?とわからなくなってきたので整理します。簡単にいうと、重力と万有引力の関係は以下のようになります。
重力=遠心力+万有引力
(上図:国土地理院重力測量HP https://www.gsi.go.jp/buturisokuchi/gravity_menu01.htmlより引用)
地球は自転しているため、地球上の物体は中心に向かう力(向心力)の反作用として遠心力がかかります。同時に、質量を持つ物体同士には万有引力が働くことはニュートン以降認められています。
この合力が重力ですが、遠心力の影響は引力に比べて非常に小さいので概ね無視できます。
このため、重力=万有引力としてみると、その力は以下の式で表せます。
F=GMm/r²〔N〕
Gは定数、Mとmは2つの物体の質量、rは物体間距離です。
本来万有引力は質量をもつ2つの物体間には働きますが、定数Gの値が非常に小さい(G = 6.67×10⁻¹¹ N⋅m²/kg²)ため、少なくとも片方が巨大な質量を持たない限り認識することはほぼないでしょう。
五条の術式はファンタジーであるため、厳密な公式は当てはまらないのかもしれませんが、上の式を見てみるとちょっと思いつきました。
万有引力は、物体間距離の二乗に反比例する
という点です。
質量が巨大でなくても距離rの値が小さければ小さいほど、引力Fは大きくなります。
例えば、漏瑚が恋人つなぎ直前の『止まっている』状態にあるとき、二人の距離は限りなく小さいが0ではない、極微小の値をとります。その状態が持続している間は、引力Fは認識できるくらいの大きさになるのではないでしょうか。モノを吸い込むような力というのは、その時の引力と考えられるかもしれません。
最後までお読みいただきありがとうございました。
繰り返しますが本記事は個人の一意見であり、正確性等を担保するものではないのでよろしくお願い致します。
0や無限、重力などについてほとんど反映できませんでしたが、以下の本や資料等は参考になると思います。記事中に載せたページも再掲しておきます。
*参考文献等
・Tooda Yuuto様のブログ アタリマエ!HP
https://atarimae.biz/archives/5584
・TANTANの雑学と哲学の小部屋HP
https://information-station.xyz/2782.html
・高校数学なんちなHP
https://naop.jp/topics/topics28.html
・国土地理院重力測量HP
https://www.gsi.go.jp/buturisokuchi/gravity_index.html
・異端の数ゼロ 早川書房 チャールズ・サイフェ著 林大訳
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