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【ゴールデンカムイ考察】14巻の謎

今週火曜日に発売されたゴールデンカムイ最新14巻。

息もつかせぬ怒涛の展開に圧倒されましたが、気になる新情報や伏線と思える箇所が勢ぞろいだったので、少し考察してみました。

個人の感想ですので、根拠などはわたしの直観によるところが大きいのでご注意ください。よろしければ暇つぶしにでも。

 

 

【14巻からみえる3つの謎】

①尾形とキロランケの共謀

②のっぺら坊の真意

③鶴見陣営の内情

 

 

 ①尾形とキロランケの共謀

14巻は誰が誰と手を組んでいたのか、味方なのか敵なのか、次々と明らかになる新事実に息をつく暇もない怒涛の展開でした。13巻までで和やかに食事をしていたメンバーとは思えない裏切りと寝返りの嵐でしたね。

そのなかでもやっぱり衝撃を受けた人が多かったのが、尾形の行動ではないでしょうか。13巻で尾形の口から「チタタプ」が出た所為で完全に油断してました。まさか今になって主人公サイドと真っ向から対立することになろうとは。キロランケの裏切りは前々から示唆されていたけど、尾形は意図が全く語られないので怖いですね…。

 14巻で尾形とキロランケがあらかじめ手を組んでいたことが示唆されましたが、既刊を改めて調べると伏線がいくつも張られていたようなので以下で整理します。

 

伏線(ⅰ)キロランケは元第七師団で日露戦争に参加していた

5巻48話 キロランケ

“俺は第七師団だ”

“名前と顔の傷でピンときた…不死身の杉元”

 第七師団で不死身の杉元の異名を知り、現在除隊しているならばほぼ確実に日露戦争に参加しているはず。また、別の小隊とはいえ第七師団なら、軍所属時に尾形と接点があった可能性もある。

伏線(ⅱ)目くばせと助け船

13巻までで尾形とキロランケの会話シーンはほとんど見られない。しかし、見逃せない描写が2か所ある。それが9巻81話と12巻116話だ。

9巻81話は江渡貝邸で杉元一行と土方一行が邂逅した場面で、キロランケは杉元側に、尾形は土方側に居た。互いに一行として完全に初対面のはずなのに、無言で目くばせをし合い頷いているコマがある。

12巻116話はインカラマッに嫌疑をかけられているキロランケに、尾形が助け舟を出した場面が描かれている。一見、鶴見中尉しか知らない情報を知っているインカラマッを尾形が怪しんでいるだけとも取れるが、これは窮地に立たされたキロランケを助けるためではないだろうか。

14巻で共犯関係にあるとはっきり示された尾形とキロランケだが、以上から考えると手を組んだ時期は9巻で行動を共にするより前ではないだろうか。伏線(ⅲ)で手を組んだ時期についても考えていく。

伏線(ⅲ)1巻で尾形が単独行動をしていた理由

尾形は造反前、鶴見中尉の懐まで入り込んでいる。

尾形は花沢中将の自害工作によって鶴見中尉と深く関わっており、新たな軍神として鶴見陣営の象徴となることを期待されていた描写がある(11巻103話より)。茨戸騒動の後、土方一行との会話ではのっぺら坊が殺害したとされる7人のアイヌの遺留品について知っており、ただの一兵卒とは思えない情報を持っている(8巻70話より)。鶴見中尉のことなので、尾形をどう利用するつもりだったのかは真意はわからないが、内部情報を教えられる程には近しい関係にあったと推測できる。

 つまり、尾形は鶴見中尉の情報から別の小隊所属のキロランケがのっぺら坊の仲間である可能性を知り、接触したのではないだろうか(鶴見中尉の命令であったのか、自発的な行動かは不明)。尾形とキロランケが軍時代から手を組んでいたのなら、1巻の単独行動はキロランケに会うためであった可能性が出てくる。本格的な造反前にキロランケに情報を伝えにいったのならば、アシリパのコタン近くで行方をくらました理由に説明がつく(かもしれない)。

尾形の単独行動と造反組については未だ謎が多いので、今後明らかになることを期待しています。

 

②のっぺら坊の真意

 14巻ではじめて、のっぺら坊=ウイルクが確定したことで物語は大きく進み、新章へと加速していく。しかも、この時重要な情報が本人の口から語られている。

14巻137話 ウイルク

アイヌを…殺したのは 私じゃない………”

 のっぺら坊(ウイルク)は1巻の冒頭からずっと『7人のアイヌの同胞を殺し、金塊を奪った男』として描かれていたのに、137話でそれが覆されたことで一層謎が深まったと言える(個人的にはこのどんでん返しに結構驚きました)。杉元との会話から金塊の場所を知っているのは確かなようだが、金塊をどうしようとしていたのかは語られなかった。アシリパのことを「アイヌを導く存在」「アイヌの未来」と呼び、キロランケに「あいつは変わってしまった」と言われ殺害されたことから(実行犯は尾形だが)、ウイルクはかつての仲間ではなくアイヌの為に動いていたと推定できる。

キロランケはウイルクの変化に気づいたため、仲間を裏切ったウイルクを殺し、金塊だけを祖国へ届けようと考えているのか…。

14巻139話 キロランケ

“あいつが…変わってしまったんだ

金塊の情報を古い仲間に伝えに行くはずだったのに…”

 羆に襲われる馬を助けたり、インカラマッや杉元まで害するつもりがなかったように、キロランケは出来るだけ犠牲を少なくするように動いている。なのにウイルクに関しては金塊の情報さえ吐き出させずにその場で殺すことを選んだのは意外だった。アイヌ7人が殺され、ウイルクが独りで金塊を隠したときから二人は完全に袂を分かっていたということだろうか(アイヌを殺したのはキロランケなのか、その仲間なのか、全く違うのか…それによってキロランケの立ち位置も変わるような)。

 また、ウイルクと土方の関係も怪しい。土方にアシリパの存在を「小蝶辺明日子」と伝えているが、アシリパという名前は教えていない。和名は本人とウイルクしか知らないため、これでは本人に接触しない限り特定できない。土方のほうもウイルクをただのアイヌではなく、パルチザンだと推定しているし、この二人は手を組んでいるようでいて警戒し合っている。土方を本当に信用しているならば複数の囚人に暗号を託すなどせず、土方にだけ伝えて機会を待てばよいのだし。

以上から、ウイルクは故郷の仲間パルチザンを裏切り、アイヌの為に金塊を隠し、娘を筆頭としてアイヌだけで独立運動を遂行できるように計略を巡らせていた可能性が高いと考えられる。

 

③鶴見陣営の内情

 最後に気になるのが鶴見陣営の不穏さ。14巻では鶴見陣営の容赦のない闘いっぷりが圧巻だったが、彼らは本当に優勢なのだろうか。

武装した看守たちと700人の凶悪犯を相手に、少数で完全勝利を収めた第七師団(もとい鶴見親衛隊)は圧倒的に見える。杉元を味方に引き入れ、多くの刺青人皮を手に入れて情報も戦力も豊富に感じるが、行動をひとつひとつ見ていくとかなり危うい橋を渡っている。

鶴見中尉の陣営は、2巻16話で部下が100名弱とあったが、14巻133話では63名の部下を引き連れている。大立ち回りを演じるには結構少ない人数に思える。鶴見中尉の部下は日露戦争後100名前後まで減り、その後囚人達との戦闘や造反によって更に人数を減らしている。14巻時点で、その数はほぼ増えていないのではないか。

また、2巻13話では上官である和田大尉を殺害する際「もう庇いきれん」「陸軍に戻る場所はもはや無いと思え」と言われている。大尉が『庇いきれない』ほどの行動を起こし続けている鶴見中尉を、軍上層部はかなり警戒しているはずだ(その上、大尉が失踪したというのはかなり怪しまれているだろう)。それでも失脚していないのは『泳がされている』からと考えると都合がいい。鶴見中尉が金塊を手にした途端、『中央』によって取り押さえられるという手はずだったりしないだろうか。

造反者の存在や、月島が鶴見中尉の狂気に冷や汗を流す描写は、鶴見陣営が硬い一枚岩ではないことを示唆している。狂信的な人物がいる一方、尾形の掌握に失敗したり、側近の月島と微妙な齟齬があるような描写があることから、精神的な部分でも鶴見陣営には危うさがあると思われる。

 

また、14巻で最も気になったのが以下の2つである。

(ⅰ)中央への軽視

網走監獄への侵攻時、月島軍曹が中央への言い訳について鶴見中尉に尋ねた際のやりとりを考えてみる。

14巻131話 鶴見中尉

“蝗害も暴動も 中央の人間がこんな地の果てまで確かめに来ることはまず無い”

“中央なんぞにはいつだって事後報告で充分だ”

 中央からの刺客や間諜に警戒していないのだろうか。油断によって不覚を取る、というのは作品内でもよく出てくるパターンなので、このような敵への軽視ととれる発言はちょっと恐い。陸軍の『中央』という言葉は月島や鯉登、鶴見中尉から度々出てきているが、そちら側の人間について今のところ一切情報が無い。実は既に入り込んでいて、終盤に正体を現す展開とかないだろうか。(個人的には、鯉登少将や有坂中将が怪しいのではないかと疑っているが…二人とも関わりが濃厚すぎるから違うのか。月島は尾形が中央の間諜と疑っていたが、これはミスリードな気がする。)

(ⅱ)謎の人影

14巻を読み返して一番ぞくっとした場面が138話にある。

網走監獄を舞台にした戦闘が終わり、燃える獄舎でひとりだけ立ち上がる影が不気味に描かれている。これは一体誰なのだろうか。

139話を見ると、日時は不明だが、監獄内を第七師団が見回って後処理をしているのは夜が明けた時刻である。一方138話で獄舎内に居た人影は、まだ暗い時間で描写されている。獄舎付近や周りの建物付近でも、描かれているのは教会堂を見ている土方だけである。このことから、第七師団は戦闘後、夜の間は火災から逃れるために監獄を退避していたと考えられる。

人影は『獄舎内の戦闘での生き残り』と考えるのが妥当と思われる。囚人か兵士か看守か定かでないが、兵士なら師団の仲間として息がある者を助けるだろうし、囚人(か看守)である可能性は高い(囚人ならば火災が収まった後死亡を確認すればよいだけなので、多少虫の息でも気づかれないか放っておかれた可能性が高い)。

ここまで考えて14巻をはじめから読み返すと、新たな可能性が浮上する。

14巻131話 

月島 “監獄側の人間が誰か一人でも証言すればその報告は成立しませんが…”

鶴見 “監獄側の証言者?”

 なぜこの会話があったのか。

 初見では月島が鶴見に恐れを持ち、不和となる予兆かと考えていたけれど、これこそ伏線ではないだろうか。

炎のなか立ち上がった『生き残り』の人影は、後に“監獄側の証言者”となって鶴見中尉を追い詰める相手なのかもしれない。第七師団が火災により退避していたならば、この人物は無事逃げおおせた可能性が十分にある(尾形やキロランケ、土方一行などは逃げおおせている)。

(思い付きにすぎませんが、そうだったら14巻は鶴見中尉の活躍を描きながら、実は一番追い詰められた巻なのかもしれないので、伏線が緻密すぎておそろしい…。

 鯉登少将が息子を樺太へ向かうよう指示を出したのは、鶴見陣営の粛清に巻き込まないためだったり…しないかな…)

 

14巻はそれぞれの人物の分岐点となる本当に重要な巻でした。何度読み返しても謎が深まる、密度の濃い巻でしたね。網走監獄の見学に行きたくなりました。

 

 

以上、①から③まで如何でしたでしょうか。

長文をお読みいただきありがとうございました。

それっぽく書きましたが個人の推測なので、本当のところはわかりません。

早く15巻が読みたいです。

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