zarameのブログ

おすすめ本の紹介などしています。著者をア行からワ行まで順番に。

【おすすめ本2018】28冊目 川上和人

おすすめ本紹介、28回目です。
この記事では著者の五十音順に、わたしのおすすめ本を紹介しています。
今回は鳥類学者、川上和人氏から。

 

鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。

鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。

 

 タイトルにあるように、作家ではなく鳥類学者が書いているエッセイです。

鳥類学者の知られざる日常が垣間見れる作品で「研究者あるある」満載の、どうしようもなく格好のつかない研究者の姿を面白おかしく書かれていて最後まで笑いながら読めました。

目次を見てもらうと、本のイメージが大体掴めると思います。

 

第一章 鳥類学者には、絶海の孤島がよく似合う

第二章 鳥類学者、絶海の孤島で死にそうになる

第三章 鳥類学者は、偏愛する

第四章 鳥類学者、かく考えり

第五章 鳥類学者、何をか恐れん

第六章 鳥類学者にだって、語りたくない夜もある

 

細かい内容はあまりネタバレしないほうが面白いので書きませんが、学術書では一切ありません。ただただ鳥類学者の波乱万丈なフィールドワーク、鳥類へのコアな愛情、悪戦苦闘する研究の日々を綴っているエッセイです。

語り口がとても独特で、ユーモアあふれる文章からは堅苦しさを感じず、でも鳥類と研究への情熱がそこはかとなく伝わってきます。読み終わったらちょっと鳥類を調べてみたくなりました。

 

第二章の絶海の孤島こと小笠原諸島の調査のくだりなんかは、同情を寄せたくなるような苦難に満ちた調査について書かれており、自然科学系のフィールドワークを行ったことがある人はみんな「わかる!」と叫んだのではないでしょうか。普通の登山等レジャーでは味わえない道なき道を行く行程、危険生物との遭遇、重い荷物(サンプル採取)、ダニとやぶ蚊・小バエの大群。学生時代の悪夢のフィールドワークをちょっと思い出してしまいました。

のび太が「ぐうたら感謝の日」を制定した6月だというのに、我々は額に汗して準備を仕上げる。救急救命講習を受け、いつの間にか死亡時5000万円の生命保険をかけられる。「梅雨から脱して南の島なんて素敵♡」そんな幻想を吹き飛ばす男だらけの2週間のため、1年にわたって準備が進められた。

 ランプに集まる無数の小バエが、呼吸とともに口と鼻から侵入してくる。

(中略)

原生の自然が美しいなんていうのは、都会派の妄想に過ぎない。現実の自然は死体にまみれ、口にハエがあふれ、心の中に悪態が湧き、心身共にダークサイドに堕ちていく。だからといって呼吸をやめると、私自身が死体天国の仲間入りだ。

よく考えろ、私。何か解決策があるはずだ。

   (「鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。」第二章より一部引用)

壮絶なフィールドワークについて書かれていますが、語り口が軽妙なのでハラハラしつつ笑いながら読めます。

特に、上で引用した「解決策」がとても面白かったので、ぜひ確かめてみてください。

 

研究者なんて自分とは全く違う世界の人だと思っている人は、これを読んでみたらきっと親近感が湧くと思いますよ。