【GWを読書で終えてしまった】ヒトごろし読了
ことし1月末に発売された京極夏彦の著作「ヒトごろし」。
永久保存版「鉄鼠の檻」や、「鬼談」「虚談」など同時期に一気に発売されるという事前情報から、「鵺の碑」が発売されるのではと一部ファンが浮足立っていました(わたしもそうですが・・・・)。
しかし、新選組鬼の副長、土方歳三の生涯を描いたという「ヒトごろし」もかなり話題になってました。気になり、読もう読もうと思いながら手を出せず、このGWを使って読もうとようやく購入。迫力ある表紙と1000ページを超える「鈍器」と言われる分厚さが特徴です。
新選組というと、小説からマンガ、ゲームまで取り入れられていて、現代風のイケメンや悲劇のヒーロー、悪役など色々な解釈がされていてかなり人気の高い人達なのではないかと思います。
しかし、この小説はさすが京極夏彦‥‥。
こんなに陰鬱に、淡々と残忍に描かれている土方歳三ははじめて見ました。
GWは晴天が多く、暖かいというより暑いくらいのまさに行楽日和といった天気のなかで、血腥い描写をゆっくり読み続けて放心している間にGWが終わってしまいました。
自分を「ヒトごろし」と自称する土方歳三が、「人を殺しても罰せられない身分」を手に入れるため、新選組をつくったという大胆な設定の物語。攘夷や尊王、倒幕に佐幕と、百姓から武士まで様々な人間が理想や思想を語り、好き勝手に行動する様子を冷静に眺めている描写がヒヤリとします。「ヒトごろし」の外道と描かれる土方が一番、幕末の狂乱を冷静に眺め、現実を認識しているように見えるのがこわいところでした。
“幕府さえ倒せばどうにかなると思い込んでいる。強く激しく思い込んでいる。そうした思い込みがなければ、こんな仕打ちに耐えられる訳もないのだ。極めてー。
愚か者である。”
その結果、大量に人が死ぬ。
だから。
戦争は、人殺しというこの上ない禁忌を無効化してしまう行いに他ならないのだ。”
(小説より一部抜粋)
時代の流れや周りの状況を見ず、戦争を扇動する者たちを冷ややかに見て、愚かな行為だと断じる。
徹底して外道として描かれているのに、鋭い観察眼と読み進めるほどに共感できる部分が増えてくるのが不思議です。京極マジック。
土方歳三の生涯を時系列に、出来事を淡々と描写しているので予備知識が無い人には少し読みにくい仕様でした。すべて土方の一人称で語られているのに全く感情的にならないところが面白い。
爽やかさ0%のGWを送ってしまいましたが、これはこれで読めてよかったです。