本の虫生活

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バルガス・リョサを読んでみた

本当は『緑の家』を読もうと思ったのですが、下巻だけ本屋になかったためこちらが初読になりました。 

 

アンデスのリトゥーマ

アンデスのリトゥーマ

 

 

ノーベル賞作家ということも知らず、以前誰かがTwitterで書評を書いていた『緑の家』が気になり、いつかこの著者の本を読もうと決めていました。

南米はいつか絶対旅行に行こうを決めていて、大好きな土地なのですが、南米の文学作品というのは今まで全く読んだことがなかったので、ワクワクしながら読んでみました。

 

ペルーのアンデス山脈山中で起こった3人の男の失踪事件を捜索する伍長のリトゥーマと助手のトマス、失踪直前まで男たちが立ち寄ったとされる酒場の夫婦、不気味な悪霊の噂と迷信、苛烈な革命の嵐、トマスの恋愛話。なんだか横溝とか京極を思いっきり異国情緒で描いた舞台設定が最初から好みで、あらすじを見た瞬間に買いました。

山中の道路工事現場で働く作業員の男3人が失踪した時点から物語は始まり、伍長リトゥーマが失踪の原因よ3人の行方を周囲の人びとへと聞き取ります。しかし、作業員たちは口が重く、何等かの関わりがあったとされる酒場の夫婦や怪しげな占いや悪霊の噂を口にするばかりで肝心のことは何も話さない。助手のトマスは協力するどころか、自分の元を去った可愛い娘の思い出話に浸るだけで毎日を過ごしている。遅々として進まない捜査とトマスの思い出話、失踪した3人の男たち自身の回想、土地を巡る迷信、現地の文化や自然を研究する外国人、各地で激しい暴力を引き起こす革命軍団。すべてが最後に一つの真実へと収束するとき、ぞっとするような『現実』が眼前に現れ・・・。

 

最初は様々な視点、時系列、妄想や記憶が行ったり来たりする独特の表現方法に慣れず、ミステリよりも幻想系かと思い読み進めてきました。アンナ・カヴァンとかより読みやすいけれど、そっちよりに思えるといいますか。どこまでが作中で語られる『現実』で『記憶』で『妄想』なのか。読めば読むほど混乱するようで、しかし徐々に3人の男の背景や事情、周辺地域の荒れた世相、怪しげな迷信が浮かび上がってくる文章は、幻想的で抽象的に見えつつ、とても精密に仕組まれた書き方だと最後に分かり、俄かに戦慄します。

最後まで読んで「ミステリだったのか」と驚き、煙に巻かれていたことに気付きページを捲りなおしたくなる、そういう小説でした。

※ちょっと怖いといいますか、グロテスクな描写もあるので、苦手な人はご注意ください。

 

異国情緒たっぷり、旅情緒を誘うとは到底言えない恐ろしく荒れた治安、革命にかこつけた激しい暴力、自然の驚異が描かれていて、行くのはとても怖ろしいと感じるけれど、何故か前より南米に行きたくなりました。簡単には理解できない離れた文化、野蛮と感じるかけ離れた習俗。自分が簡単に理解できないからこそ、もっと知りたくなるのかもしれません。

ちなみに、わたしはアンデス山脈パタゴニア地方が大好きで、パタゴニアという広大な地域のなかに、山脈、氷河、湖、森、草原など様々な豊かな自然を含んでいます。一回じゃまわりきれないから、本当は1年くらい住んでゆっくり回りたいです。

また、アンデス山脈にはこんな珍しい花があります。

世界遺産を紹介する番組で観て、100年に1度しか咲かないという壮大なスケールに圧倒され、咲くまでの1か月をテントを張って見続けたいと思ってました。

高校の国語で『夢十夜』第一夜を読んだとき、「プヤライモンディだ!」と思って集中できなくなったのを思い出します。

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