本の虫生活

おすすめ本の紹介などしています。著者をア行からワ行まで順番に。

#MIU404からアンナチュラル、或いはアンナチュラルからMIU404

暑くて、感染も気を付けて、なかなか外に出られなくて仕事とドラマと本とTL監視みたいなことを続けてしまう。

 

ここのところ、休日出勤残業続きであたまが疲れてしまい、あまり本が読めないのがつらい。感染拡大の影響で仕事がなくなるより随分恵まれているとは思うけど、36協定の範囲内くらいで、疲れ切る前に休みたいというのも本音。と、まあ、楽しくない愚痴と疲労のただなかで、最近すごい勢いでドラマにハマっている。

 

もう、本も読めないくらい疲れた、自粛にも暑さにも我慢が疲れた、なにもする気力が起きない自分に自己嫌悪、そういうときに、ドラマとか映像って効く。あまり映画は観ないし、ドラマなんてもっと観なかったけど、信じられないくらいハマってる。本とは違った方法だからこそ表現できる魅力がある。

 

 

#MIU404

この前も紹介したこのドラマ、8話観てまた心が抉られて…

(あらすじをもう一回説明するのは面倒なので、こちらか公式HPをどうぞ)

 ☟MIU404  公式HP

https://www.tbs.co.jp/MIU404_TBS/
伊吹と志摩が1話から互いを知り、過去を知り、未然に防げた事件と防げなかった事件で後悔を共有する。今までは伊吹が志摩を引っ張り上げる、が印象強かったけれど、8話のラストシーン、志摩が伊吹に手を差し伸べ、伊吹が自分で立ち上がるまでゆっくり寄り添うのが刺さる。引っ張り上げるのではなく、隣に立ち、手を握ったまま伊吹が自力で立ち上がるのを待つ。そのあとも、手を引いていくのではなく、歩き出した伊吹の背を優しく押してくれる。一方的に引っ張ったり引っ張られる関係ではなくて、互いが一人で立ち、片方が立ち上がれないときに側で支える、という、今までで一番‟相棒”という言葉がしっくりくるシーンでした。

 1話、4月の配属から煽り運転の追跡、2話でDV被害・パワハラに搦めた殺人事件、3話は上級生の不祥事に振り回され青春を奪われた学生、4話カジノで借金を背負い、マネーロンダリングの実行犯をさせられた女性の逃走劇、5話は外国人技能実習生達を巡る搾取の構造、6話悪意に踊らされ警察の良心を揺さぶられた志摩の元相棒の死について、7話トランクルームに10年間住み続けた指名手配犯、そして8話、定年まで警察官として勤め上げ、伊吹を導いた恩人の真実、…。

 回を追うごとに、1話からの流れがすべて独立していた訳ではなくて、精緻な伏線で彩られていたことに気が付く。過去起こったことすべてに意味があり、取り返しの付かないことと防げた事件の差は何か、丁寧に編み上げてくる計算されたストーリー構成と台詞回し、映像がキレッキレで何度も観返したくなる。

それにしても、DVにパワハラ、大人の都合で夢を奪われた学生、カジノにハマり人生を狂わされた人間、いいように搾取される外国人技能実習生、警察の正義に惑う警官、社会から逸脱し‟幽霊”となった犯罪者、罪を許せず自ら罪を犯した警官。社会的に弱い立場の人、突然被害者となった人、誰からも‟救いの手”を差し伸べることがなかった、自ら‟救いの手を取らなかった”人が、犯人であるのが苦しい。誰しも幸福で、衣食住が足りて、暴力や罪に足を踏み入れる必要がなければ罪は侵さない。ギリギリのラインで‟誰かが手を差し伸べてくれたか”、或いは‟差し伸べてられた手を取れる状況だったか”、そこが分岐点となる。タイトルにもなった分岐点、成川や青池が通過した道、2話犯人が逃げた道、随所に挟まれるピタゴラ装置(決まった道を通り、または道から落ち、または壊れて通れなくなった道)。‟道”のメタファーが凄く多くて、読み切れてない伏線の一つだと思うけど、そもそも機捜が毎日走り続ける‟道”が、多くの運命を左右する分岐点なのだとも読めて、まさにこのドラマにぴったりの演出だと思います。恩人のガマさんが悲劇に見舞われたのも自宅前の‟道”と言えなくもないか。桔梗の息子くんが志摩に修理を頼んだピタゴラ装置、この‟壊れた道”と‟自分で直すんだ”という台詞も意味深に思える。なにか「自分で壊してしまった、間違えた過去を自分で償う、修正する」っていう隠喩?まさかあの息子さんが悪い大人に利用されて桔梗さんがピンチになるとか…子どもが被害に遭う話は厭だなあ、と思うしまさかまさか。結局、盗聴器の目的もわかってないし来週がこわい。

もうひとつ気になるのが、5話がダイレクトにそうだけど、8話でガマさんの奥さんが言っていた外国のボランティアの話、度々‟外国人”というワードが挟まれていること。今では欠かすことのできない労働力であり、隣人であるのに距離を感じる外国人、なにか今後重要な役割になるのかな。

 

また8話に戻るけれど、8話の怖いところは、伊吹にとっての‟救いの手”であった恩人が、自らは救えなかったこと。人を救えた人間でも、悲劇や少しの狂いが生じれば、たちまち加害者になることもある。自らの手を罪から遠ざけてくれた恩人が救いようのない場所へ遠ざかってしまう、1話で感じた、そして志摩と積み上げた日々がつくってきた、煽り運転の犯人を捕まえ、学生たちを引き換えさせ、指名手配犯に引導を渡した実績による「最悪の事態になる前に止められる」という自負、それがこの8話で裏返されたという見事な演出。予定調和では終わらない冷たい現実を知り、物語の濃度が一気に増してきた感じがします。

恩人を止められなかった伊吹が「何ができた」「どうすれば防げた」と叫ぶシーンと、1話の「何かが起こる前に止められる、機捜ってすごくいい仕事だ」と言ったシーンが対比になっているのが切ない。それでも遣る瀬無さだけが残る訳ではなくて、後悔で蹲る伊吹に志摩が手を差し伸べる。前の相棒、香坂には差し伸べられなかった手を、今度は間違えないとばかりに揺るぎない手を差し出す(ゆっくりと手を取る間とか、複雑な、いくつもの感情を混ぜ込んだ表情とか、顔を照らす光とか、ドンピシャのタイミングで挿入される歌とか、そういうところ、映像ならではの強みを存分に活かしてきている)。過去1人では防げなかった悲劇を持った2人が手を取り合って本当の相棒となったことで、きっと最終回には、「ちゃんと防げる」「1人では無理でも、2人ならできる」ところを見せてくれるのではないかなあ、と思います。「諦めずに、公共や福祉に頼ること」だったり、「最後にひとつだけ」人を助けたり、絶望に落ちそうななかでも、救いの手を伸ばす人がいる、そういう小さな希望を灯してくれるので、重いテーマでも重く沈みすぎずに視聴者を掬い上げてくれる、きっと悲劇だけじゃない明日が来ると最後には示してくれるのではと期待してます。それにしても毎回面白くて困る。最終回後のロスがこわいこわい。

 

 

#アンナチュラ

 MIU404にドハマりして、以前ブームになっていたアンナチュラルが同じ脚本家の作品と知り、なんとなく気になっていたけど、ついに観ました。

Amazonプライムで観放題…このタイミングは嬉しすぎる。全く観たことなくて知らなかったけど、アンナチュラルの登場人物たちがMIU404に出演してると聞いて。そもそも、こんなに計算しつくされた脚本を書く人なら、絶対に面白いだろうなと思い1話観ました。

Amazonプライムビデオ

 https://www.amazon.co.jp/gp/video/storefront/ref=sv_atv_logo?node=2351649051 

 

二転三転して様相を変えていくストーリー、真実がどこにあるのか最後まで視聴者を離さない、やっぱり思い通り面白かった。しかも、前知識なしで1話を観てびっくり。2018年製作なのに「コロナ」というワードを連発してて、「うそでしょ??予言???」とびっくり。実際の今の状況とはだいぶ違うけれど、感染症の恐ろしさ、何より情報の隠蔽により感染が広がり、被害が増大したことを問題提起するこのテーマが、ピタリと世相に当てはまるような感じで恐ろしい。偶然とは思うけれど、このドラマは1話だけでも今、絶対、観る価値があると思う。

まだ1話しか観てないけど、ゆっくり楽しんで観てみよう。

 

MIU404からアンナチュラルを観るのも楽しいし、きっと先にアンナチュラル観てた人は、わたしとは違ったMIU404を観てるから面白いし、どちらから観てもお得な気がする。リンクする2つの違った世界を楽しめるなんて、贅沢な話だ。