本の虫生活

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【実家モラトリアム】ひとり暮らしへの憧れ

コロナ禍という言葉が浸透し、「外出自粛」にも慣れてきた今日この頃。

家にこもる中、ひとりの時間が逆に減ったことに今更気づきました。

5月を目途にひとり暮らしをはじめる予定だったのに、予想外の展開に肩透かしを食らったかたちで、実家暮らし継続の日々を送っています。

 

もともと就職と同時にひとり暮らしをして、田舎で友達も親戚もいない土地での『孤独』という感じのひとり暮らしを始めたときは、早く地元に戻りたい、或いは友達のいる東京に住みたい、と強く思いました。

でも意外に、一年やそのくらい過ぎてみると、田舎に住んでいるからこそ誰にも気を遣わなくてよい自由があることに気が付き、結構楽しかったと記憶しています。家族や友達が近くにいる状況だと、自分ひとりで気ままに過ごしたいと思ってもすぐ予定が埋まるだろうし、それはそれでちょっと面倒なときもあります。でも田舎暮らしなら、1か月くらい仕事以外の用事がないこともあるし、そういう時、自分が行きたい場所やお店にフラッと入ったり適当に映画を観たりできるのが利点です。

 

なにが言いたいかというと、そういうひとり暮らしの『自由』をまた謳歌するつもりだったので、実家暮らし延長戦にはちょっと辟易しているところもあります。

そういうとき、この本を読み返して気持ちが少し変わったので、せっかくなので紹介します。

ひとり暮らし (新潮文庫)

ひとり暮らし (新潮文庫)

 

 

ペンギンの表紙がかわいい、詩人谷川俊太郎のエッセイ集。

前にも紹介したような、してないような気がしますが、兎に角いまの気分にすとんと嵌まった本なので、わたし以外の人にも合う人はいる気がします。

 

谷川俊太郎の詩には全然詳しくないですが、さすが詩人というべきか、短いエッセイなのにゆっくりと味わいたくなる情緒とユーモアが散りばめられています。

タイトルの通り、谷川俊太郎自身のひとり暮らしの話だけでなく、家族、若い頃の話、死生観などなど…、外に出られない、出かけられない今こそ立ち止まって考えたい、人生の色々なことを書き連ねている本です。

 

ひとり暮らしの出鼻をくじかれ、実家暮らしのストレスというか、ひとり時間を作りにくいちょっとした苛立ちが、この本を読むと小さくなっていきます。考えてみれば、次のひとり暮らしの後は、年齢的にもう実家に戻ることはないのだなと思うと、「これが最後の実家暮らし」と郷愁とか寂しさがないこともありません。あまり結婚とか家族への憧れがないし、この先他人とともに暮らすイメージがないので、複数人がひとつ屋根の下で暮らすというこの感覚をいつか懐かしく、戻りたいと思うときがきっと来るのだと、そう感じました。

この本はひとりの孤独、ひとりの豊かさと寂しさ、家族(複数)の孤独と嬉しさ、それぞれを語っています。ひとり暮らしをしたから自由になる訳ではないし、家族と暮らしたから孤独でなくなる訳でもない、暮らし方は変われど自分は自分。当たり前の毎日、暮らし、人生について書いてある短いエッセイですが、読むとすこし気持ちが落ち着き、この先の人生について気を緩めて考えることができる、そういう常備薬のような本です。

以上、本紹介でした。

 

 

※追記

ひとり暮らしはいつ始められるかいまはわからないですが、いまはゆっくり複数人の暮らしをただ過ごせばいいかと、思考を投げることにしています。

ただ、オンラインのやり取り中、友達との電話中に家族の声が入らないかはかなり気になるので、どうしたら改善できるか目下検討中です。家族がいてテレワークしている人も共通の悩みと思います。友達と家族と職場、この3つは別のものなので、あんまり相互に見せたくない、というのが困りものです。読書はどこでもできるのがいいですね。

そういえば、外出を極力減らしてもう3週間くらいは経ちますが、積読が減らないのは何故でしょう…。3月末に焦って本を大人買いしたからでしょうか。あのときはマスクや消毒液よりも本を買いに走った気がします。でも買っておいてよかった。積読がなくなると心の余裕が減るので。