本の虫生活

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【五十音順・おすすめ小説紹介】53冊目 田中芳樹

おすすめ本紹介、53回目です。
この記事では著者の五十音順に、わたしのおすすめ本を紹介しています。
今回は田中芳樹氏の代表作です。

銀河英雄伝説 1 黎明編 (創元SF文庫)

銀河英雄伝説 1 黎明編 (創元SF文庫)

 

 SF作家として多くのファンを持つ田中氏の代表作、銀河英雄伝説。最近になってアニメ化や漫画化されるなどして注目されています。正伝10巻と外伝5巻から成る長編シリーズですが、軽妙な語り口に魅力的なキャラクターのお蔭かあまり長いとは感じませんでした。未読の方はぜひ正伝2巻まで読んでみることをお勧めします。きっと、あっという間に10巻まで購入してしまうでしょう。

歴史の一幕のような壮大なスケールの中で繰り広げられる二人の英雄の火花散る頭脳戦、数々の謀略と罠、そして予想もしなかった結末へ。一気に引き込まれることを保証します。小説やSF好き以外にも、アニメや映画好きの方にささりそうな作品だと思います。ここで簡単にあらすじを載せておきます。長くてちょっと…って尻込みする方はぜひ2巻まで、2巻まででいいので読んでみてください。

 

 <あらすじ>

銀河系を統べる大国の銀河帝国と、帝国を脱出し民主主義を掲げて反旗を翻した自由惑星同盟という2つの国家は、長い間闘争の歴史を重ねていた。あるとき、帝国と同盟で二人の天才が台頭し歴史の大きな転換点を迎えた。ひとりは帝国の若き美貌の将軍、『常勝の天才』と呼ばれる炎の気性を持つラインハルト。もうひとりは最悪の状況から奇跡のような勝利を導き出す、底知れない眼差しを持つ知将、『不敗の魔術師』ヤン。二つの陣営に加え、得体の知れない中立国フェザーンの関わる陰謀が渦巻き、宇宙の均衡は音を立てて崩れ始める。最後に宇宙を手にするものは、一体だれなのか。

 

作品の見所はたくさんありますが、やっぱりラインハルトとヤン、二人の物語が主軸だと思います。

帝国の下級貴族である美貌の少年ラインハルトは、最愛の姉を皇帝の手から取り戻すため帝国の頂点を奪おうと軍に入り、同盟軍相手に次々と武功を立て出世するようになる。銀河を手中に収めようと野望を持つラインハルトは、幾度も危機に陥りながら順調に権力への階をすすめますが、彼の行く手には暗雲が立ち込めはじめ、彼が変貌していく様子にハラハラさせられます。

一方、危なっかしいラインハルトに比べ、ヤンは安定しています。ラインハルト陣営に比べて人材が少なく、戦力も大きく劣るヤン陣営ですが、彼の安定感のお蔭でそんなにハラハラしませんでした。しかし、作中で飄々としているとか、覇気がないように言われるヤンもラインハルトに負けない激情を胸に秘めています。どちらも好きですが、ヤンにハマる人は多いんじゃないかなと思います。すごくズルい人です(カッコよすぎて)。

 

 未読の方はぜひ正伝から読むのをお勧めしますが、外伝もやっぱり外せません。正伝のサイドストーリーとして、本編で描かれなかった空白の期間や、ラインハルトやヤンの前の時代の話、脇役のスピンオフなど多彩な作品が目白押しです。

少し外伝の内容をご紹介します。

星を砕く者(外伝1巻)

ラインハルトとキルヒアイス、ミッターマイヤーとロイエンタールの邂逅の物語。ラインハルト陣営の要で、『双璧』と呼ばれた二人の将軍とラインハルト達の出会いから味方になるまでを描いた作品です。正伝の1年前の話です。正統派勧善懲悪ものという感じで、印象的な場面の多い話でした。

 

ユリアンのイゼルローン日記(外伝2巻)

外伝のなかで一番好きです。とにかく面白い。ヤンが司令官として初めてイゼルローンに赴任うことになった期間のヤン陣営の日常を、ユリアン視点で描いています。日記というだけあって、ユリアンがつけた日記という体で書かれています。愉快なイゼルローンの仲間たちとヤンを崇拝するユリアンの日常、本編で割愛された日常の一コマがたくさん載っていて狂喜しました。それにしてもユリアンのヤン愛がちょっと重くて笑いました。

 

千億の星、千億の光(外伝3巻)

同盟側で人気の高いシェーンコップの若き日々のスピンオフ、そしてラインハルトの准将時代が収録されています。シェーンコップは青年期からあんまり変わってなくて安定感がありました。外伝で主役級のスピンオフが出るとはやっぱり破格の扱いです。本編ではすでに権力を確立している描写の多いラインハルト達のもどかしい日々もちょっと新鮮でした。

 

螺旋迷宮(外伝4巻)

名付けてヤン少佐の事件簿。これはもはや別の小説として楽しめます。銀英伝を知らなくても、本編を全く読んでいなくても読める1冊です。エル・ファシルの英雄として祀り上げられてから、また表舞台に出てくるまでの短い期間、辺境の惑星へ赴任したヤンが謎解きをする探偵譚です。本編で地味に活躍するパトリチェフやムライといったキャラクターとの出会いも描かれています。普通に好きです。

 

黄金の翼(外伝5巻)

正伝10巻読了後に読むと、切なくて眩しくて泣けてきました。ラインハルトとキルヒアイスの冒険のはじまりの日々。二人の出会いから少年期、青年期の青春の日常が垣間見えます。同盟側のほのぼのとした空気感とは違いますが、若く情熱と夢と野望に胸を膨らませた少年たちが只管まぶしかったです。そして異色の1篇、正伝より何十年も前、帝国と同盟の安定した時代の『ダゴン聖域会戦記』が載っているのも見逃せません。こういう過去の出来事は④にも出てきましたが、銀英伝は本編で描かれない過去やサイドストーリーをしっかり作り込んでいるから物語に説得力があるのかなと思いました。

 

以上、外伝の紹介でした。なぜか正伝の紹介より長くなってしまいましたが、正伝のほうは読んで確かめていただければと思います。

ついでに過去に銀英伝を紹介した記事を載せておきます。銀英伝やっぱり好きです。

zaramechan.hatenablog.com