本の虫生活

おすすめ本の紹介などしています。著者をア行からワ行まで順番に。

【五十音順・おすすめ小説紹介】57冊目 陳舜臣

おすすめ本紹介、57回目です。
この記事では著者の五十音順に、わたしのおすすめ本を紹介しています。
今回は耽美派から陳舜臣氏。

小説十八史略(一) (講談社文庫)

小説十八史略(一) (講談社文庫)

 

 古の夏王朝より遡ること数千年、神々の時代から宋末~モンゴルの覇権時代までを網羅した全6巻から成る大作。

中国の元の時代に編纂された歴史書で、『史記』『漢書』『三国志』などの18の歴史書をまとめたものであるため、十八史略という名前がついています。本書はその歴史書陳舜臣氏が小説仕立てにアレンジした作品です。

 

この作品は、わたしが高校生のときに世界史を勉強する代わりに読んだものでした。高校の世界史の授業だとほとんど近代以降しか習わないし、中国史などすべて無視だったので何となく気になっていて手に取りました。

しかし、すぐそんなこと関係なく物語に入り込み読みふけるようになりました。この本を読んでから三国志水滸伝、楊家将、武侠もの、果ては西遊記山海経、捜神記など手を出すほど中国の歴史や文化に魅了されたので、わたしの東洋好きはここから始まったと言っても過言ではありません。

 小説仕立てですが、時折筆者の解説が入ったり、短い話がテンポ良く続いていくショート・ショートの連作というような感じで、とっつきやすいし好きな時代だけ読むということもできるのがポイントです。『臥薪嘗胆』『呉越同舟』『三顧の礼』など、日本でもお馴染みの故事成語の元となった故事が盛りだくさんなのも見所です。中国ものの他の小説の副読本として重宝したり、故事成語を覚えたり歴史の勉強に使ったり、単純に小説として楽しんだり、色々な楽しみかたができる作品です。

 

簡単に各巻のあらすじを書いておきます。

1巻・・・神話の時代から夏、殷王朝の栄華と終焉、周の統一、そして始皇帝の台頭。    中国の長い歴史がはじまる群雄割拠と英雄の時代。

2巻・・・始皇帝の死後、再び混迷を深めた大陸の動乱。戦乱の末に勝利を勝ち取ったのは大帝国の漢。

3巻・・・名高い武帝を生んだ前漢も滅び、続く大王朝もなく短い帝位が入れ替わった時代。

4巻・・・後漢のあと、日本でも絶大な人気を誇る三国志の時代。三顧の礼赤壁の戦いなど三国志の主要な事件を網羅。

5巻・・・隋、唐の煌びやかな時代。大帝国の栄枯盛衰を描く巻。英雄豪傑の時代が終わり、文化の花開いた時代。

6巻・・・安史の乱の前に儚く散った唐のあと、再び混乱に陥った大陸。今までの騒乱とは違う、モンゴルの勢いの前に歴史が大きく動く最終巻。

 

 1巻から順に読むのがおすすめですが、好きな巻を1冊だけ読んでみるのもいいと思います。古代や三国志、唐の時代などを読んでおくと、漢文の授業に役に立つという嬉しい効果があったので、学生の方は勉強がてらパラパラ読むのもいいでしょう。

三国志水滸伝、楊家将、金庸武侠ものなどもこれを機に読んでみるといいかもしれません。武侠もの、日本でもっと流行らないかな…