【五十音順・おすすめ小説紹介】51冊目 武田砂鉄氏
おすすめ本紹介、51回目です。
この記事では著者の五十音順に、わたしのおすすめ本を紹介しています。
今回は武田砂鉄氏。
『何気なく耳にするフレーズには、実は社会の欺瞞が潜んでいる』
今まさに文章を書いているこちらを見透かすような説明文に魅かれ、一気読みしました。最近書かれただけあって、ニュースやSNSで物議をかもした事件について痛烈に批評されていて興味深かったです。
ただ、著者が本当に釘を刺しているのは本書でやり玉に挙がった政治家や有名人ではなく、したり顔でうなずきながら文章を読んでいるわたしたちのように思いました。
特に言葉。フレーズ。キーワード。スローガン。 自分で選び抜いたと信じ込んでいる言葉、そのほとんどが前々から用意されていた言葉ではないか。紋切型の言葉が連呼され、物事がたちまち処理され、消費されていく。そんな言葉があふれる背景には各々の紋切型の思考があり、その眼前には紋切型の社会がある。
(新潮社「紋切型社会」武田砂鉄著 p4より一部引用)
この言葉がすこしでも頭にひっかかった人は、ぜひ読んでみてほしいと思います。
21項目に渡る議論が本書で展開されていますが、わたしが特に面白いと思ったのが以下の6つです。
(目次から抜粋)
02 育ててくれてありがとう 親は子を育てないこともある
04 禿同。良記事。 検索予測なんて超えられる
13 うちの会社としては なぜ一度社に持ち帰るのか
18 そうは言っても男は 国全体がブラック企業化する
21 生産性 誤解を招いたとしたらお詫びします
02は結婚式のスピーチの紋切型表現へ感じる強い違和感について、04はSNSの『いいね』やリプへのどことない不信感について。06は目次のタイトル以外に『就活』への言及があったので、自分にとってタイムリーでとても腑に落ちました。お祈りメールをもらって傷つくのはなぜか。1社落ちるたびにゲッソリと疲弊するのはなぜか。読んで謎が解けました。13はドラえもんの世界と会社組織をなぞらえて「会社は誰のものか」という問いを考えています。どれから読むか迷ったら、最初にこの章を読むことをおすすめします。18、21は性差や性自認の話です。話題になっている今読むことで、ただの流行りで終わらずに様々な思考をするきっかけになると思います。
意見を発表する前に、文章を書く前に、本書のことを少し思い出し、自戒しながら書いていきたいと思いました。立ち止まって言葉を選ぶようにすれば、社会はすこしだけ変わるかもしれません。