zarameのブログ

おすすめ本の紹介などしています。著者をア行からワ行まで順番に。

【おすすめ本2018】39冊目 桜庭一樹

おすすめ本紹介、39回目です。
この記事では著者の五十音順に、わたしのおすすめ本を紹介しています。
今回は桜庭一樹氏から2冊。

青年のための読書クラブ (新潮文庫)

青年のための読書クラブ (新潮文庫)

 

 あるお嬢様学校を舞台にしたダーク系青春小説。

東京、山の手の一等地に敷地を構える名門女学校「聖マリアナ学園」では毎年「王子」こと学園のスターが輩出される。

女子しかいない平和で息の詰まる学園のなかで、偽の男を演じるのはもちろん女子。演劇部や生徒会など、美貌と家柄を誇り生徒から憧れの目線を向けられる品行方正な「女子」達が王子に選ばれている伝統に、あるとき風穴が開けられる。女子の花園に波乱を演出したのは、「読書倶楽部」という小さな部だった。

 

 桜庭作品のなかで1、2を争うくらい好きな作品です。世間知らずのお嬢様たち、育ちがよく清楚で、明るさに満ちている普通の女子たちが事件に揺さぶられ、残酷さや移り気な非情さを露呈していく描写にゾクッとしました。

マイナーな派閥の「読書倶楽部」は、ときに「王子」が現れたり、落ちぶれた「元王子」を匿ったり、ひっそりとした小さな倶楽部にも関わらず台風の目になっています。

シラノ・ド・ベルジュラック等の外国の文学を読み込むなど、高い教養をみせる孤高の軍団「読書倶楽部」が「王子」を巡る狂騒と冷ややかに、ときに熱く関わっていくのがドラマチックです。やがて終わりの来る学園生活で、定められた「箱庭」の中で一時の熱狂に酔いしれる女子たちが微笑ましくも滑稽で、懐かしくも気恥ずかしい自分の学生時代を思い出しました。

 

 

2冊目がこちら。

私の男 (文春文庫)

私の男 (文春文庫)

 

 1冊目とは打って変わって、狂おしい愛を描いた問題作です。

 

 9歳で孤児となった女の子を、一人の若い男が引き取り家族となった。

 場面は女の子、花が成長し結婚をするところからはじまる。結婚式の当日、養父の淳悟はなかなか姿を現さず、花は激しく不安に陥る。遅れてきた淳悟を見て、花のこころは過去へと飛んでいく。式はつつがなく終わったが、新婚旅行から帰ってきた花は、養父が部屋を引き払い、失踪したことを知る。

 

養父、淳悟との別れから出会いまで、アルバムを遡るように1章ずつ時は過去へ戻り、父と娘の秘された物語が紐解かれていきます。世界でふたりだけの家族、いくつもの秘密を抱えた行き場のない親子の罪の物語だと思いました。

禁忌を共有するふたりが互いに依存し、忌避しながら愛し合う描写が胸に重くのしかかりました。世間から逃げ続けなければならない苦境と、絡み合った相互依存の陶酔が混じり合って、腐臭のする醜さと純粋な美しさを文章から感じました。

 この作品をはじめて読んだときは10代だったので、かなりドキドキしながらこっそり読んでいたのを思い出します。今思えば、ミステリやSFばかり読んでいた当時、甘美な「背徳感」を初めて知った読書だったような気がします。

 設定や構成は真新しいものではないのですが、文章から感じるねっとりした匂い、温度、触感と「背徳」の狂おしい情が抜きんでています。

他ではなかなか味わえない読後感をもたらす本でした。