zarameのブログ

おすすめ本の紹介などしています。著者をア行からワ行まで順番に。

【おすすめ本2018】37冊目 近藤史恵

おすすめ本紹介、37回目です。
この記事では著者の五十音順に、わたしのおすすめ本を紹介しています。
今回は近藤史恵氏から2冊。

天使はモップを持って (文春文庫)

天使はモップを持って (文春文庫)

 

 数ある著者のシリーズのなかで一番好きな作品です。

 主人公は会社などによくいる清掃員の女の子キリコ。本書は、清掃員である彼女がオフィスで起こる不可解な事件を颯爽と解決していく「日常の謎」連作ミステリです。

清掃員というと、地味な作業服で目立たずひっそりと仕事をしているイメージがある人が多いと思いますが、主人公キリコは全然違います。

おしゃれで華やかで若くて可愛い、一般の清掃員のイメージとかけ離れた快活な彼女はもちろん仕事も一生懸命で、生き生きと働いています。

彼女は、頭脳明晰で明るく仕事に取り組んでいるけれど、ときには世間から向けられる奇異のまなざしや心無い言葉にさらされます。傷つきながらも前を向いて立ち上がる姿に、読みながらエールを贈りたくなりました。

日常の謎ミステリは様々な作家が書いていますが、そういった探偵のなかでキリコが一番好きです。シリーズを追うごとに立場も変わり、悩みながら行動する彼女に愛おしさが募ります。

 

賢者はベンチで思索する (文春文庫)

賢者はベンチで思索する (文春文庫)

 

 2冊目も日常の謎ミステリです。

著者は社会の中で主役ではない、不安や疎外感を感じる人たちに焦点を当てるのが上手いな、と感じます。

こちらの探偵役は認知症といわれている老人。専門学校を卒業してから就職がうまくいかず、フリーターをしている21歳の久里子のバイト先の常連客です。あるとき偶然、公園でこの国枝老人と出会った久理子は、認知症とはとても思えないような鋭い洞察を見せる彼に驚きます。公園では賢者になる国枝老人との交流を通して、先の見えない不安を抱え、立ち止まっている久理子が成長する様子を優しくほろ苦く描いた連作短編集です。

上で述べた、ひたむきで明るく努力するキリコも大好きですが、悩んで立ち止まってしまう久理子もすごく共感できて好きでした。

順風満帆にいく人生ではなくて、周りに置いて行かれたような気になって立ち止まる瞬間は、遅かれ早かれほとんどの人が通る道だと思います。でもそうやって立ち止まったときは、色んなことを考えるきっかけでもあります。そんなときは、悩める人へ示唆と勇気を与えてくれる本を読むのもいいかもしれません。

 

近藤史恵さんの描く日常の世界は、優しくはないけど希望もある、厳しいけど偶にご褒美もある、そんな世界が多いです。

ままならない自分の日常に疲れたときに読み返して、忘れていた希望を思い出せればいいなと思います。