本の虫生活

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【おすすめ映画】スターリンの葬送狂奏曲

今年 8月3日から上映している問題映画『スターリンの葬送狂騒曲』。

本作は1953年のソ連を舞台に、恐怖政治で社会を牛耳っていた独裁者ヨシフ・スターリンの急死によって巻き起こった権力闘争を描いた作品。ロシアで上映が禁止されるほど辛辣なブラックジョークが持ち味です。

映画館で見られる内にぜひ多くの人に観てもらいたいと思い筆を執りました。

 

まだ観てない方へ。

 

騙されたと思って観てほしい。

 

近年観た映画のなかで、ベスト3に入るくらい衝撃的な作品でした。

思いっきり笑える、感動で涙する、スカッとする等、映画は色々な気持ちを呼びおこしてくれます。しかし、この映画はちょっと違いました。

価値観や常識を揺さぶり、観た後時間が経つほどに心を侵食してくる衝撃作品です。

日本の映画は、全国の映画館で上映される作品といえばハリウッドなどスカッとするアクション系、人気アニメ、小説等が原作の感動ドラマが多い印象があります。本作は史実を元にしたいわゆるブラックコメディ映画です。権力を風刺と皮肉で描くコメディというジャンルは、日本でメジャーな方ではないと思います。風刺や皮肉を含んだ読み物は大好きでよく読むのですが、映画というと全然観たことがありませんでした。それだけに、観たときの衝撃はすさまじかったです。

 

正直なところ、テンポが速く重要な人物の名前もほとんど知らない状態でふらっと観に行ったので、ところどころ展開がつかめない部分もありました。

しかし、役者の名演と笑いを誘う機智に富んだセリフ回しにあっという間に引き込まれました(ちなみに英語の音声なので、聞き取ってみるとさらに面白いです。字幕で表しきれないジョークにクスッとすると思います)。スターリンの後継者の座を巡り、おおまじめに策を弄し足を引っ張り合う4人が滑稽で可笑しいのに、ところどころ挿入される恐怖政治の描写にヒヤッとさせられる。このバランスが絶妙で、『ブラックコメディ』という触れ込みにふさわしい内容でした。

 

 そして一番皮肉が効いているのは、ロシアで『上映禁止』となったことです。

権力を風刺する作品を、権力が抑圧する。これこそ皮肉の極みではないでしょうか。

 

これについては日本も対岸の火事ではないかもしれません。

自国第一主義全体主義を掲げる国が増えている世界情勢。20世紀の大戦前のような不穏な空気を感じるという声があがりつつある現代社会。映画を観たあと、笑っていたコメディが笑えない現実に摺り替わってしまわないだろうかという恐怖も感じました。

 

映画よりブラックなのは、『現実』かもしれない。

それこそ全然笑えないブラックジョークです。

 

 以下に上映館を載せておくので、偶々時間が空いた、ちょっと興味があるという方はぜひ。おすすめです。


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