zarameのブログ

おすすめ本の紹介などしています。著者をア行からワ行まで順番に。

【おすすめ本2018】35冊目 栗本薫

おすすめ本紹介、35回目です。
この記事では著者の五十音順に、わたしのおすすめ本を紹介しています。
今回は栗本薫氏から。

豹頭の仮面―グイン・サーガ(1) (ハヤカワ文庫JA)

豹頭の仮面―グイン・サーガ(1) (ハヤカワ文庫JA)

 

 小学生のときにうっかり手に取って、大変苦労した作品。

 おそらく、小学生が読むにしては色々難のある作品だった気もします。ただ、長い作品を読む根気と歴史もの、大河とよばれるジャンルへの興味を掻き立てたのは、間違いなくこの作品でした。

 

<あらすじ>

 中原の辺境、魑魅魍魎が跋扈するルードの森に記憶を失った一人の男が倒れていた。その男は自分の名前から素性、これまでの経緯をすべて忘れていたが、ひとつだけ異様な特徴があった。-彼は世にも奇妙な『豹頭』の人間であった。

同時期、中原の古き大国パロの双子の王子と王女が、戦争から逃れるためにルードの森へ飛ばされていた。豹頭の男グインと、王子レムスと王女リンダ、そして偶々合流した傭兵イシュトヴァーンの4人組は、王子らを祖国パロへ帰すため壮大な旅に出ることになる。

この4人の出会いから、長大な物語『グイン・サーガ』が幕を開ける。

豹頭の戦士グインが自らの正体を探すために旅をする漂流譚であり、祖国を取り戻そうと奮闘するリンダとレムスの成長物語であり、一介の傭兵から王へ成り上がろうとするイシュトヴァーンの血塗られた覇王譚でもある。主人公たち以外にも多くの登場人物の人生が絡み合い、めでたしで終わらない苦悩と歓喜の混沌の物語。

 

https://www.guinsaga.net/special/images/map.gif

https://www.guinsaga.net/index.html より引用

現在は原作者逝去により別の作者が物語を引き継いでいますが、それでもまだ結末の見えてこない大長編で、143巻まで刊行されています。

主要(名前が何度も出てくる)人物だけで100人を超えるし、大国から小国まで10以上の国の内情(政治や文化、歴史)まで微に入り細を穿ち描かれるため、既刊まですべて読んでいてもなかなか全ては頭に入ってきませんでした。

 

いままでで一番感想が書きづらい作品です。

自分としても面白かった部分と受け入れにくい部分の両方があって、『精緻に練られた物語』とか『感動巨編』とかではしっくりきません。特に後半になると冗長な文章や展開が続き、「つまらない」という声も多く聞きました。でもわたしは、グインサーガの魅力は全体で見てこそ、と思います。ファンタジー巨編や大河ロマンという作品は他にもたくさんあります。しかし、愛憎入り混じり複雑に絡み合い、すれ違う人間模様が劇的に描かれる群像劇という意味でグインサーガは突出していると思います。

妄執、悲哀、絶望、孤独、憎悪、卑小さを描かせたら右に出る者はいない、というくらい鬼気迫る人間描写はグインサーガならではだと思います。ドロドロの愛憎劇と暖かな家庭や親愛。薄紙一枚で表裏の入れ替わる怖さが醍醐味です。

 

本編だけでも長くて読むのが大変なのですが、外伝もおすすめしたいです。本編で描かれなかった登場人物たちの過去編が中心で、短編仕立てなので本編をあまり知らなくても、全部読んでいなくても楽しめます。個人的には以下の巻がおすすめです。

 

グイン・サーガ外伝7 十六歳の肖像

グイン・サーガ外伝7 十六歳の肖像

 

パロの宰相アルド・ナリス、その弟で王家を出奔した吟遊詩人マリウス、パロの魔道師ヴァレリウス、そしてアルゴスの黒太子スカールの16歳の日々を描いたサイドストーリーです。全員、主人公4人に次ぐ重要人物であらゆる登場人物と交錯し、運命を変えていく役割を持つので、外伝を読むなら押さえておきたい1冊です。本編より先に読めないこともないと思います。

 

グイン・サーガ外伝8 星の船、風の翼

グイン・サーガ外伝8 星の船、風の翼

 

パロ王家に連なる異母兄弟、アルド・ナリスとアル・ディーン(後のマリウス)の若き日々を描いた外伝です。

複雑な宮廷事情のために幼い頃から両親に養育されず、異母弟のアル・ディーン(のちのマリウス)とともに冷遇に耐えていたナリス。弟を庇護し、王族として歩もうとするナリスと、血の呪縛を厭い自由を望むディーンのすれ違う兄弟の物語です。愛憎劇の多いグインサーガのなかでも、この兄弟の哀しさは秀逸でした。ナリスの理解されない愛が苦しい。

 

国も文化も歴史も全く違う人たちがそれぞれの人生を生きている中で、運命を交差させていく。そういう大河ロマンと呼ぶべき魅力がある作品です。