本の虫生活

おすすめ本の紹介などしています。著者をア行からワ行まで順番に。

【五十音順・おすすめ小説紹介】33冊目 京極夏彦

おすすめ本紹介、33回目です。
この記事では著者の五十音順に、わたしのおすすめ本を紹介しています。
今回は京極夏彦氏から。

文庫版 姑獲鳥の夏 (講談社文庫)

文庫版 姑獲鳥の夏 (講談社文庫)

 

 「この世には不思議なことなど何もないのだよ」

 

京極夏彦の『百鬼夜行シリーズ』の第一作。思い入れが強すぎて何から書いていいかわからないですが、自分の価値観を叩き壊し再構築を促した衝撃的な作品なので、簡単にですが紹介していきます。今でもおすすめTOP10に絶対入れるシリーズです。

 シリーズを通しての感想や紹介は別記事でいつか書こうと思っているので(多分)、とりあえず『姑獲鳥の夏』について紹介します。

 

 <あらすじ>

 昭和27年夏。小説家の関口巽は、旧友で古本屋『京極堂』の店主・中禅寺秋彦を訪れ、 東京・雑司ヶ谷久遠寺医院での奇怪な噂について話をした。『妊娠二十箇月たっても生まれない赤子』『一年半前に密室から失踪した夫』という怪しい話の渦中の人は、実は関口の高校時代の先輩夫妻であった。関口が衝撃の事実を知らされた直後、探偵榎木津礼二郎のもとに妊娠している娘・梗子の姉である久遠寺涼子からの依頼が舞い込み、これを機に関口は次第に事件の舞台へと引きずり込まれていく。涼子は妹の夫・牧朗を捜索してほしいと探偵に依頼するが、探偵の振る舞いは不可解で、明らかに乗り気でない。関口は榎木津の代わりに涼子の話を聞き、彼女の力になろうと奔走する。しかし、関口らを待ち受けていたのは想像を超えた事態であったーーー。過去と現在、現実と虚構が入り混じる、不気味と哀しい箱庭の真実を、京極堂が暴きだす『憑き物落とし』シリーズ第一作。

 

 太平洋戦争後の影響を残す昭和の夏、気だるげで雑多な時代に、急速に発展する社会と消えつつある歴史のはざまに落ちた事件を独特な手法で書ききった作品。はじめて読むタイプの小説に度肝を抜かれました。横溝正史江戸川乱歩のような不気味で妖しい雰囲気を感じるのに、京極堂の『言葉』は理路整然としていてむしろ現代的です。探偵はあくまで真実を言い当てるだけで、謎を解体するのは憑き物落としの拝み屋(探偵より探偵らしい告発者)というのも探偵ものとしては異色で面白かったです。京極堂によって次々と怪異が解体され、白日の下にさらされるカタルシスは、ミステリの醍醐味も味わえます(ただし、ミステリと思って読んだ人はあまりの型破りに驚くと思います)。脳科学、発生学、民俗学、精神医学を一つの物語に混ぜ込んでいて、しかも全てがリンクして鮮やかな結末を導いている物語の構成力もさることながら、一度読んだら忘れられない印象的な登場人物にすっかり魅了されました。

 

姑獲鳥の夏』はシリーズ1作目ですが、現在8作目まで出版されていて、外伝も他にいろいろあります。文庫なのに1000ページを軽く超えてくることから『辞書』『鈍器』など呼ばれていますが、どれも物理的に重いだけでなく内容も濃いので、じっくり楽しめます。文体は結構読みやすいので、硬派な歴史ものとか(飯嶋和一さんのような)よりはスラスラ読めました。

 

物理的にも精神的にも重厚すぎて、ちょっと休憩したいという方には百器徒然袋がおすすめです。短編仕立てで、探偵が大活躍する痛快でクスっと笑える要素も多い外伝です。わたしはこちらを先に読んで存在を知り、姑獲鳥で心を撃ち抜かれて全作揃えました。

文庫版 百器徒然袋 雨 (講談社文庫)

文庫版 百器徒然袋 雨 (講談社文庫)

 
文庫版 百器徒然袋 風 (講談社文庫)

文庫版 百器徒然袋 風 (講談社文庫)

 

 

あと、コミカライズ化されているのですが、原作の雰囲気に合った絵柄が綺麗なのでこちらも結構好きです。ページが限られている分、ちょっと物足りなさは感じてしまいますが、原作と合わせて読むと2倍楽しめて得したような気分になりました。

姑獲鳥の夏 1 (怪COMIC)

姑獲鳥の夏 1 (怪COMIC)

 
百器徒然袋 鳴釜   薔薇十字探偵の憂鬱   (怪COMIC)

百器徒然袋 鳴釜   薔薇十字探偵の憂鬱   (怪COMIC)

 

 

最後に、百鬼夜行シリーズの聖地巡礼(というほどでもないですが)に以前行ってきた記事を載せておきます。

zaramechan.hatenablog.com

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