zarameのブログ

おすすめ本の紹介などしています。著者をア行からワ行まで順番に。

【おすすめ本2018】32冊目 北村薫

おすすめ本紹介、32回目です。
この記事では著者の五十音順に、わたしのおすすめ本を紹介しています。
今回は北村薫氏から2作。

覆面作家は二人いる (角川文庫)

覆面作家は二人いる (角川文庫)

 

 「覆面作家」シリーズの1作目。

 <あらすじ>

若手編集者岡部は、ある突飛な作家の元へ向かうように指示される。姓を「覆面」名を「作家」というペンネームを名乗る新人推理作家の正体は、豪邸に住む弱冠19歳の美少女だった。小説だけでなく現実の謎に、岡部とお嬢様が挑んでいく日常の謎ミステリ短編集。

 

 探偵役が資産家の御令嬢で美少女で頭脳明晰という盛った設定ですが、このお嬢様の一番の魅力は繊細さと豪胆さを併せ持つギャップです。家の中ではまさにお嬢様といった清楚で控えめな性格なのに、一歩でも家を出ると活発すぎる豪快な振る舞いを見せる内弁慶ならぬ外弁慶。そんなお嬢様と編集者岡部のコンビが、小説だけでなく現実の世界でも名探偵として活躍する連作短編集です。

マンガやライトノベルのような設定で、ミステリ好きにとってはありふれた内容に感じるかもしれませんが、北村薫ならではの優しく繊細な筆致が冴えていて、ふっと心を和ませてくれる作品です。北村氏のミステリはしっとりと繊細な心の機微を描き、絡まった糸を解きほぐすような柔らかさを感じる作品が多いのが好きです。

覆面作家」シリーズは次作「覆面作家の愛の歌」三作目「覆面作家の夢の家」もあります。二人のコンビの行く末まで描かれる最終話は、ドキドキしながら読めました。

 そしてもう一作のおすすめがこちら。

 

スキップ (新潮文庫)

スキップ (新潮文庫)

 

 「時と人」三部作のひとつ。

<あらすじ>

 昭和40年はじめ、千葉の海岸付近に住む女子高生一ノ瀬真理子は、大雨で運動会の後半が中止になった夕方に家で一人、レコードをかけて目を閉じた。目が覚めると、「わたし」は桜木真理子42歳、夫と17歳の娘がいる高校の国語教師になっていた。

 

 日常ミステリの名手として知られる北村氏の作品のなかでは、異色のシリーズだと思います。一気に25年もの歳月が経ったという現実を前に、真理子がどのように立ち向かっていくのか。ちょうど17歳くらいのときに読んだけれど、いまでも17歳の真理子のように強く生きていけるか考えると、ちょっと見習いたいと思います。

厳密にはシリーズではありませんが「ターン」「リセット」という別作品が三部作として有名です。時間に翻弄されるそれぞれの物語は、「日常の謎」作品より重厚で違った読後感を味わえます。馴染みはないけどどこか懐かしく感じる昭和の空気をリアルに感じられる描写にも引き込まれました。

同じ時間を繰り返し続ける「ターン」は、「スキップ」とは違った緊張感があり、最後まで展開が読めない面白さがあります。「リセット」はまた前の二作とは趣向が違います。前半からは「何がリセットなのか」全くわからないまま進み、第二部、第三部と読み進めてようやくその答えが明かされます。第二次世界大戦という戦時中の社会のなかで、容赦なく進んでいく時と運命に身を任せるしかない人生の悲劇と奇跡。時を超えて蘇る奇跡とは…。

大人向けの文学といった趣もあって、年を取ってからまた読み返したくなるような作品だと思います。