zarameのブログ

おすすめ本の紹介などしています。著者をア行からワ行まで順番に。

【おすすめ本2018】31冊目 北杜夫

おすすめ本紹介、31回目です。
この記事では著者の五十音順に、わたしのおすすめ本を紹介しています。
今回は北杜夫氏から。

輝ける碧き空の下で〈第1部 上〉 (新潮文庫)

輝ける碧き空の下で〈第1部 上〉 (新潮文庫)

 

 ブラジル移民を知っていますか。

 

「楡家の人びと」「さびしいシリーズ」「どくとるまんぼうシリーズ」「幽霊」「夜と霧の隅で」など、北杜夫氏の作品は名作揃いで、どれを選ぶかとても悩みます。

でも、わたしにとってこの小説が一番衝撃的だったので選びました。

国に後押しされ、ブラジルに渡った日本人たちの味わった壮絶な人生を眼前に蘇らせる大作です。

 

明治41(1908)年、第一回移民を乗せた船「笠戸丸」が神戸を出港し、800名弱の日本人がブラジルへと旅立ちました。

ブラジルは150万名もの日系人が住む、世界最大の日系人社会を持つ国です。日本でもブラジルから日系人が出稼ぎに来たり、移住するという話は耳にします。しかし、日系人が爆発的に増える切っ掛けとなった明治期のブラジル移民については、日本であまり知られていないように思います。
本書は、第一回の移民船がブラジルに向かうシーンからはじまり、最初の移民たちが如何に苦しみ、努力し、そしてブラジル社会の一員となっていったのかを克明に描いています。

2、3年の出稼ぎのつもりで一攫千金が見込めるという触れ込みを信じ、想像を絶する苦闘を強いられた最初の移民たちの生活描写が圧倒的でした。生い茂るジャングルの開拓、マラリアの猛威、農園で奴隷に等しい生活を強いられる人々。ブログでは書くのを躊躇うような悲惨な生活の実態に目を覆いたくなりますが、かつて移民政策によって辛酸を舐めた人達がいるのは事実です。実際は何があったのか、当時の人は何を想い、生涯を終えたのか。小説を読まなければ考えることもなかった歴史の一幕に、想いを馳せずにはいられませんでした。第2部では後に続く移民たちの話も描かれます。最初の移民たちより経済的に豊かな状態で開拓に臨み、全く違った生活を手に入れた人もいます。同じ移民と言っても、時期やほんの少しの違いで全く別の運命を辿る人がいて、実際の移民についてもっと知りたくなりました。

時代に翻弄されながら苦しみ、強かに、足掻きながら異国を生きた移民を描いた本書は全日本人に読んでもらいたい名著です(絶版でもう手に入れられないことがとても悔しいです)。北杜夫ほどの人でも、売れなければ絶版になるというのが出版業界の不況を表すようで怖くなりました。好きな本は早めに買っておくほうが良さそうですね…。

 

(以下は本の感想ではないので、興味のない方はとばして下さい)

 

 「復刊ドットコム」というサイトでは、絶版になった本を投票で復刊するという事業を行っています。

もしどうしても手に入れたい本がある方は、一縷の望みをかけてみてもいいかと思います(わたしは本書「輝ける碧き空の下で」を投票したので、読みたいという方はご協力をして頂けるととても嬉しいです。本当に復刊するかは分かりませんが…)。