zarameのブログ

おすすめ本の紹介などしています。著者をア行からワ行まで順番に。

【おすすめ本2018】12冊目 伊坂幸太郎②

この記事では著者の五十音順に、わたしのおすすめ本を紹介しています。
11回目に引き続き、伊坂幸太郎氏から。
今回は長編を4冊紹介します。

 

1冊目 「ラッシュライフ

 

ラッシュライフ (新潮文庫)

ラッシュライフ (新潮文庫)

 

 伊坂作品にハマるきっかけとなった1冊。

空き巣を生業とする泥棒、成金画商と画家、新興宗教にハマる男、お互いを邪魔に思い消そうと企む夫婦、リストラで失業中の男と野良犬。5つの全く違う話が並行して進むうちに、奇妙な結びつきをみせる展開、知らぬ間に交差する複数の人生。ぐいぐいと作品の世界に引き込まれ、一気に読んでしまいました。

単行本では、騙し絵で有名なエッシャーの絵が表紙に描かれています。それぞれの人生の物語は全く違った方向を向いているのに、最後に思わぬ形でつながっているのがわかるという、まさに騙し絵のような小説。一度目で驚き、二度目で伏線を検証し、三度目で機智に富む言葉の真意に思いを巡らせ、読み返す度に違う楽しみを味わえます。

 

 

2冊目 「グラスホッパー

 

グラスホッパー (角川文庫)

グラスホッパー (角川文庫)

 

 伊坂作品でもいくつかありますが、「殺し屋」をテーマにした小説の最初の作品がこちらです。

妻を殺された男が、犯人に復讐の機会を伺っているとき、突然事故に遭う場面で物語が動き出します。復讐を「横取り」された男は、その相手を追いかけるが、別の殺し屋たちも動き出し事態は血なまぐさく展開していくーーー。悪化する事態を予感させる不穏な情景描写、「痛い」と思わせるくらいリアルな殺し屋たちのアクション、次々と急転する場面など、ハラハラと手に汗握りながら読んだ作品です。殺し屋たちの、殺伐としながらも生き生きと人生を駆け抜ける生き様に惹きつけられました。

 

 

3冊目「陽気なギャングが地球を回す

 

陽気なギャングが地球を回す (祥伝社文庫)

陽気なギャングが地球を回す (祥伝社文庫)

 

 4人組の銀行強盗による痛快サスペンス小説。

強烈で魅力的なキャラクターの多い伊坂作品の中でも、一番好きなキャラクターたちが活躍するコメディ風味の強い作品です。

他人の嘘を見抜くリーダー、正確な体内時計の持ち主、演説の達人、天才スリという面々は、能力だけでなく性格も非凡な奴らばかり。普段は市役所、喫茶店のマスター、1児のシングルマザーなど社会に溶け込んで生活する彼らの「副業」は銀行強盗。ある日、いつも通り銀行を襲撃した帰りに突然、ぶつかって来た車に現金を横取りされてしまう。奪還に動くなか、何やら怪しい影が動き出し4人の周辺を取り巻いていく。

銀行強盗という犯罪者なのに、明るく個性的で憎めない登場人物ばかりで応援したくなるのが不思議です。軽い筆致で重いテーマに鋭く切り込み、示唆を与える文体が特徴的な著者ですが、この作品は特に軽やかでテンポもよく、映画を見ているような気分で楽しめました。シリーズとして他にも続編が出ているので、そちらも併せて読むことをぜひおすすめします。

 

 

4冊目 「ゴールデンスランバー

ゴールデンスランバー (新潮文庫)

ゴールデンスランバー (新潮文庫)

 

 首相暗殺の濡れ衣を着せられた主人公による逃走劇。

日常が急に暗転したとき、容赦なく降りかかる災厄に個人は立ち向かえるか。追い詰められたとき、人が縋るものはなにか。その答えのひとつを出してきた小説だと思います。

荒唐無稽な設定ではあるものの、権力や大衆(多数派)の攻撃にさらされる怖さと、人の縁により次々と転がっていく運命の面白さを感じました。個人ひとりではできることは少ないけど、多くの人の縁や交錯した人生が、思わぬ結果をもたらすかもしれない。運命は人との関わりのなかで変わる、絶望の中でも希望はつながっているというメッセージを感じました。良いことばかりは起こらないけど、最後にちょっと救われることもある。そんな切なくも暖かい気持ちにさせてくれた作品です。