zarameのブログ

おすすめ本の紹介などしています。著者をア行からワ行まで順番に。

【おすすめ本2018】11冊目 伊坂幸太郎①

おすすめ本紹介、11回目です。
この記事では著者の五十音順に、わたしのおすすめ本を紹介しています。
11回目は短編、長編ともに軽妙で独創的なミステリの名手として知られる伊坂幸太郎氏から。

好きな作品が絞れなかったので、今回は短編を紹介します。

1冊目 「チルドレン」

 

チルドレン (講談社文庫)

チルドレン (講談社文庫)

 

 家裁調査官の陣内を中心に、日常に起こる大小の事件に巻き込まれ、かき回していく様子をコミカルに描いたミステリ連作短編集。

なにより登場人物、ひとつひとつの会話が面白く、ままならない日常にちょっと希望を与えてくれる伊坂作品の醍醐味が味わえます。

家庭調査官とは、主に家庭裁判所において、「家事事件」や「少年事件」の当事者や家族、および事件の原因などについての調査を行います。事件の関係者など多くの人と面接を行い、家庭裁判所に送る報告書を作成するのが仕事です。

品行方正で真面目な人物を想像しがちな職業なのに、小説に出てくる陣内は自由奔放で、前言撤回も当たり前な適当な人物なのに、なぜか一つひとつの言葉が心に残り、憎めない彼に魅力を感じる作品です。

 

 

2冊目 「死神の精度」

 

死神の精度 (文春文庫)

死神の精度 (文春文庫)

 

 事故や事件で死ぬ予定の人間を調査し、「可」か「見送り」かを判定する仕事の死神と調査対象の1週間を描いた短編集。

人間の振りをして対象と接触し、噛み合わない会話をする死神にクスッと笑いながら、しかし一切の感情を表さず冷徹に判断を下す行動にぞっとする緩急のきいた物語です。

仕事として対象を観察する死神の唯一の楽しみが「音楽を聴くこと」。

CDショップに入り浸り、ふとした表紙に音楽が流れるとうっとりとする死神は、仕事以上に音楽のために時間をかけて調査をするという。音楽への過剰な思い入れと人間への無関心な視線がギャップが対比になっています。何の同情も思い入れもない死神の目から見た「最期の1週間」の人生が、何故か鮮やかに生き生きとしてみえるのが不思議です。日々を一生懸命生きている登場人物たちに、明日死ぬと確定していても爽快感を感じるのはなぜなのか。何度も読み返したくなる作品です。

 

 

3冊目 「終末のフール」

 

終末のフール (集英社文庫)

終末のフール (集英社文庫)

 

 8年後に小惑星が地球に衝突し、滅亡すると予告されてから5年後の世界を描いた話。

当初はパニックに陥っていた人々も小康状態となり、見かけ上平穏な生活を送っている仙台の団地「ヒルズタウン」の住民をめぐる短編小説です。

地球滅亡、終末ものといったジャンルは多々作品がありますが、パニックに陥る描写や大規模プロジェクトによって逃れようと必死に抗うといった物語が多い中、本作では不安を感じながらも、なにをするでもなく毎日を送る個人に焦点を当てています。

「死神の精度」でも感じましたが、人はいつ死ぬか、何が起こるかなど決してわからないのに、多くの人はそれを忘れたまま生きている、ということを著者は繰り返し伝えているに感じます。

なにか偉業を達成するのでなくても、日々を一生懸命、できることをして悔いのないように生きる大切さを思い出させてくれます。

 

 

話の構成や緻密なトリックなどより、ちょっとした言葉が心にダイレクトに届く伊坂作品が好きです。次回は長編を紹介していきます。