zarameのブログ

おすすめ本の紹介などしています。著者をア行からワ行まで順番に。

【おすすめ本2018】7冊目 新井素子

おすすめ本紹介、7回目です。
この記事では著者の五十音順に、わたしのおすすめ本を紹介しています。
7回目は新井素子氏からこちら。

 

ひとめあなたに… (創元SF文庫)

ひとめあなたに… (創元SF文庫)

 

隕石衝突による地球滅亡SF作品という、「よくある」テーマでありながら、いい意味で期待を裏切られた作品。地球滅亡をきっかけに狂気に憑かれる女性たちが妙にリアルでぞくりとさせられます。

 

物語の序盤、女子大生の圭子は最愛の恋人で彫刻家を目指す朗から突然別れを告げられる。朗は病に侵され、芸術家としての道が絶たれることにショックを受け、圭子との関係を「うっとおしい」と切り捨てたのだった。意気消沈していた圭子は朗が死ぬことをおそれ、動揺しますが、「一週間後、地球に隕石が激突する。」というニュースを目にし、最後にもう一度、朗に会いにいくことを決意する。練馬の家から、彼の住む鎌倉を目指し、彼女は徒歩で旅をはじめた。道中で4人の女性との出会いながら、圭子は朗をもとめて歩き続ける。はたして、朗と圭子の結末はーーー。

 

地球滅亡を前に自暴自棄になる人たちを後目に、圭子と4人の女性たちの行動は狂気をはらみながらも、どこか自由で、解き放たれた姿に見えます。理想の夫婦を演じつつも夫の浮気に気を病む女性、受験をひかえた女子高生、夢に憑りつかれた少女、昔の恋人を思い出す妊婦。ニュースを契機に豹変する者と、周りに構わず「いつも通り」過ごす者の対比が印象的です。グロテスクな凶行と淡々とした日常、どちらのほうが狂気に満ちているのだろうか。平和な日常では表出しなかったそれぞれの「望み」が、鮮鋭に映しだされる様子を見事に描いています。

 

自らの幸せとはなにか、何のために生きたいのか。

 

純粋な想いとは、実は結構怖いものかもしれません。