本の虫生活

おすすめ本の紹介などしています。著者をア行からワ行まで順番に。

本から伝わる音楽ーピアノ

ピアノと本はとても相性がいい。

 

ピアノは楽器で、音を楽しむものですが、小説には音楽を題材にしたものが多く、活字から音が浮かび上がってくるような感覚になれます。

特に、クラシック曲やピアノを扱った小説は有名な作品も多く、歌詞もなく音でしか感じることのできない楽曲を、言葉で鮮やかに表現している小説について紹介していきます。

 

まずは、直木賞を受賞し有名になった恩田陸氏の作品「蜜蜂と遠雷はピアノコンクールを題材にした小説ですが、この作品は音楽を聴いた人の心情描写が繊細で美しく、読みながら大ホールで客席に座って音に包まれているような感覚を覚えました。

音の旋律を表現するのではなく、聴いた人の心に浮かぶイメージ、コンサート会場で味わう言葉にできない荘厳さ、原始的な感情をゆさぶられるような感覚を見事に表現していると思います。

 

蜜蜂と遠雷

蜜蜂と遠雷

 

 また、次に紹介したいのがこちら。森絵都氏の「アーモンド入りチョコレートのワルツ」。この作品は中学生が主人公の3つの短編で構成されていて、思春期の子供と大人のあいだのモラトリアムで、いつか過ぎて忘れてしまう日常を思い出させてくれるようなお話です。

 

アーモンド入りチョコレートのワルツ (角川文庫)

アーモンド入りチョコレートのワルツ (角川文庫)

 

 

前述の「蜜蜂と遠雷」では、音楽にかける人々の情熱を感じましたが、この作品は近所のピアノ教室や、クラシックなんて興味のない子供たちが主役で、決して特別ではないけどそばにある思い出をピアノの調べを通して描いているところが素敵です。

 

最後に紹介するのが、石田衣良氏の「池袋ウエストゲートパークです。

池袋西口公園池袋ウエストゲートパーク)近くの実家で果物屋の手伝いをする主人公が、都会で起きる様々なトラブルを解決していくストーリーです。若者が都会で抱える貧困や様々な犯罪の被害、孤独をリアルな描写で表現し、それでも逞しく、どこか明るく楽し気な姿に勇気をもらえる小説です。

 

池袋ウエストゲートパーク (文春文庫)

池袋ウエストゲートパーク (文春文庫)

 

 一見音楽とはかかわりがなさそうですが、主人公がいつも店先で聴いているのがクラシック音楽で、シリーズを通して様々な曲を知ることができるのが魅力です。クラシックに興味のなさそうな若者の視点で、クラシック曲のかっこよさが語られていくのが一風変わって興味をそそられました。

 

音楽を聴いてから読んで、読み終わってからもう一度聴いてみる。

なんだか違って聴こえてくるかも・・・?