本の虫生活

おすすめ本の紹介などしています。著者をア行からワ行まで順番に。

レフレールファンクラブイベントに参加した話

先週日曜日、レフレールのファンクラブ限定イベントに行ってきました。

ファンクラブ会員になってから長かったけれど、こういう限定イベントには足を運んだことがなかったので、不安と期待でドキドキしながら参加しました。

 

普段のコンサートとは違って、ちょっとアーティストを身近に感じられる素敵なイベントでした。

内容はこんな感じです

トーク(守也から圭人へ)

抽選コーナー

ソロ演奏

 守也(カッコいい同様メドレー、新曲、未発表曲)

 圭土(ocean、未発表曲2つ)

レフレール演奏

 cross第一~第四

 ブギウギバックトゥヨコスカ

握手会

 

最初から結構テンションが高かったので驚きました。客席から扉に向かって「守也ー!!」とか「圭土ー!!」とか叫ぶのはちょっと恥ずかしくて、ひっそりと小声ですませてしまいました。

トークではお二人のいまハマっているものとか、活動状況とか、SNS掲載禁止の最新情報まで話題が盛りだくさんでした。食べる鰹節なんてはじめて聞いたのですが、お店に売ってるのでしょうか。今年上半期がもう終わってしまうけど、レフレールの活動をまだまだ注視しなきゃという充実っぷりに嬉しくなります。

ビッグイベントが目白押しなので、最新情報をチェックするなら、会員の方でないならtwitterあたりがいいかと思います(公式HPだと、定期的にチェックしないと結構見逃してしまうので…)。一年中なにかのツアーかイベントがあり、全国を回っているので忙しくてもなんとか年数回は行ける日があるのは有難いです。

 

 

ワンマンライブよりも色々なアーティストとのコラボが増えてきたのは人気が出てきて嬉しい反面、ちょっとさみしくもありましたが、ファンクラブイベントはレフレールの世界に浸れて、ちょっといつもより身近に感じられて楽しかったです。

握手会なんて今までの人生で一度も参加したことなかったけど、好きなアーティストと対面するって凄い緊張しますね。わたしはかなり挙動不審だった気がします。

 

躍動感あふれるピアノ演奏はやっぱり生で聴くとエネルギッシュで、CDでは味わえない満足感がありました。今回のイベントで弾いていた、crossシリーズを最後に貼っておきます。

 

Cross(DVD付き)

Cross(DVD付き)

 

 

【ゴールデンカムイ考察】14巻の謎

今週火曜日に発売されたゴールデンカムイ最新14巻。

息もつかせぬ怒涛の展開に圧倒されましたが、気になる新情報や伏線と思える箇所が勢ぞろいだったので、少し考察してみました。

個人の感想ですので、根拠などはわたしの直観によるところが大きいのでご注意ください。よろしければ暇つぶしにでも。

 

 

【14巻からみえる3つの謎】

①尾形とキロランケの共謀

②のっぺら坊の真意

③鶴見陣営の内情

 

 

 ①尾形とキロランケの共謀

14巻は誰が誰と手を組んでいたのか、味方なのか敵なのか、次々と明らかになる新事実に息をつく暇もない怒涛の展開でした。13巻までで和やかに食事をしていたメンバーとは思えない裏切りと寝返りの嵐でしたね。

そのなかでもやっぱり衝撃を受けた人が多かったのが、尾形の行動ではないでしょうか。13巻で尾形の口から「チタタプ」が出た所為で完全に油断してました。まさか今になって主人公サイドと真っ向から対立することになろうとは。キロランケの裏切りは前々から示唆されていたけど、尾形は意図が全く語られないので怖いですね…。

 14巻で尾形とキロランケがあらかじめ手を組んでいたことが示唆されましたが、既刊を改めて調べると伏線がいくつも張られていたようなので以下で整理します。

 

伏線(ⅰ)キロランケは元第七師団で日露戦争に参加していた

5巻48話 キロランケ

“俺は第七師団だ”

“名前と顔の傷でピンときた…不死身の杉元”

 第七師団で不死身の杉元の異名を知り、現在除隊しているならばほぼ確実に日露戦争に参加しているはず。また、別の小隊とはいえ第七師団なら、軍所属時に尾形と接点があった可能性もある。

伏線(ⅱ)目くばせと助け船

13巻までで尾形とキロランケの会話シーンはほとんど見られない。しかし、見逃せない描写が2か所ある。それが9巻81話と12巻116話だ。

9巻81話は江渡貝邸で杉元一行と土方一行が邂逅した場面で、キロランケは杉元側に、尾形は土方側に居た。互いに一行として完全に初対面のはずなのに、無言で目くばせをし合い頷いているコマがある。

12巻116話はインカラマッに嫌疑をかけられているキロランケに、尾形が助け舟を出した場面が描かれている。一見、鶴見中尉しか知らない情報を知っているインカラマッを尾形が怪しんでいるだけとも取れるが、これは窮地に立たされたキロランケを助けるためではないだろうか。

14巻で共犯関係にあるとはっきり示された尾形とキロランケだが、以上から考えると手を組んだ時期は9巻で行動を共にするより前ではないだろうか。伏線(ⅲ)で手を組んだ時期についても考えていく。

伏線(ⅲ)1巻で尾形が単独行動をしていた理由

尾形は造反前、鶴見中尉の懐まで入り込んでいる。

尾形は花沢中将の自害工作によって鶴見中尉と深く関わっており、新たな軍神として鶴見陣営の象徴となることを期待されていた描写がある(11巻103話より)。茨戸騒動の後、土方一行との会話ではのっぺら坊が殺害したとされる7人のアイヌの遺留品について知っており、ただの一兵卒とは思えない情報を持っている(8巻70話より)。鶴見中尉のことなので、尾形をどう利用するつもりだったのかは真意はわからないが、内部情報を教えられる程には近しい関係にあったと推測できる。

 つまり、尾形は鶴見中尉の情報から別の小隊所属のキロランケがのっぺら坊の仲間である可能性を知り、接触したのではないだろうか(鶴見中尉の命令であったのか、自発的な行動かは不明)。尾形とキロランケが軍時代から手を組んでいたのなら、1巻の単独行動はキロランケに会うためであった可能性が出てくる。本格的な造反前にキロランケに情報を伝えにいったのならば、アシリパのコタン近くで行方をくらました理由に説明がつく(かもしれない)。

尾形の単独行動と造反組については未だ謎が多いので、今後明らかになることを期待しています。

 

②のっぺら坊の真意

 14巻ではじめて、のっぺら坊=ウイルクが確定したことで物語は大きく進み、新章へと加速していく。しかも、この時重要な情報が本人の口から語られている。

14巻137話 ウイルク

アイヌを…殺したのは 私じゃない………”

 のっぺら坊(ウイルク)は1巻の冒頭からずっと『7人のアイヌの同胞を殺し、金塊を奪った男』として描かれていたのに、137話でそれが覆されたことで一層謎が深まったと言える(個人的にはこのどんでん返しに結構驚きました)。杉元との会話から金塊の場所を知っているのは確かなようだが、金塊をどうしようとしていたのかは語られなかった。アシリパのことを「アイヌを導く存在」「アイヌの未来」と呼び、キロランケに「あいつは変わってしまった」と言われ殺害されたことから(実行犯は尾形だが)、ウイルクはかつての仲間ではなくアイヌの為に動いていたと推定できる。

キロランケはウイルクの変化に気づいたため、仲間を裏切ったウイルクを殺し、金塊だけを祖国へ届けようと考えているのか…。

14巻139話 キロランケ

“あいつが…変わってしまったんだ

金塊の情報を古い仲間に伝えに行くはずだったのに…”

 羆に襲われる馬を助けたり、インカラマッや杉元まで害するつもりがなかったように、キロランケは出来るだけ犠牲を少なくするように動いている。なのにウイルクに関しては金塊の情報さえ吐き出させずにその場で殺すことを選んだのは意外だった。アイヌ7人が殺され、ウイルクが独りで金塊を隠したときから二人は完全に袂を分かっていたということだろうか(アイヌを殺したのはキロランケなのか、その仲間なのか、全く違うのか…それによってキロランケの立ち位置も変わるような)。

 また、ウイルクと土方の関係も怪しい。土方にアシリパの存在を「小蝶辺明日子」と伝えているが、アシリパという名前は教えていない。和名は本人とウイルクしか知らないため、これでは本人に接触しない限り特定できない。土方のほうもウイルクをただのアイヌではなく、パルチザンだと推定しているし、この二人は手を組んでいるようでいて警戒し合っている。土方を本当に信用しているならば複数の囚人に暗号を託すなどせず、土方にだけ伝えて機会を待てばよいのだし。

以上から、ウイルクは故郷の仲間パルチザンを裏切り、アイヌの為に金塊を隠し、娘を筆頭としてアイヌだけで独立運動を遂行できるように計略を巡らせていた可能性が高いと考えられる。

 

③鶴見陣営の内情

 最後に気になるのが鶴見陣営の不穏さ。14巻では鶴見陣営の容赦のない闘いっぷりが圧巻だったが、彼らは本当に優勢なのだろうか。

武装した看守たちと700人の凶悪犯を相手に、少数で完全勝利を収めた第七師団(もとい鶴見親衛隊)は圧倒的に見える。杉元を味方に引き入れ、多くの刺青人皮を手に入れて情報も戦力も豊富に感じるが、行動をひとつひとつ見ていくとかなり危うい橋を渡っている。

鶴見中尉の陣営は、2巻16話で部下が100名弱とあったが、14巻133話では63名の部下を引き連れている。大立ち回りを演じるには結構少ない人数に思える。鶴見中尉の部下は日露戦争後100名前後まで減り、その後囚人達との戦闘や造反によって更に人数を減らしている。14巻時点で、その数はほぼ増えていないのではないか。

また、2巻13話では上官である和田大尉を殺害する際「もう庇いきれん」「陸軍に戻る場所はもはや無いと思え」と言われている。大尉が『庇いきれない』ほどの行動を起こし続けている鶴見中尉を、軍上層部はかなり警戒しているはずだ(その上、大尉が失踪したというのはかなり怪しまれているだろう)。それでも失脚していないのは『泳がされている』からと考えると都合がいい。鶴見中尉が金塊を手にした途端、『中央』によって取り押さえられるという手はずだったりしないだろうか。

造反者の存在や、月島が鶴見中尉の狂気に冷や汗を流す描写は、鶴見陣営が硬い一枚岩ではないことを示唆している。狂信的な人物がいる一方、尾形の掌握に失敗したり、側近の月島と微妙な齟齬があるような描写があることから、精神的な部分でも鶴見陣営には危うさがあると思われる。

 

また、14巻で最も気になったのが以下の2つである。

(ⅰ)中央への軽視

網走監獄への侵攻時、月島軍曹が中央への言い訳について鶴見中尉に尋ねた際のやりとりを考えてみる。

14巻131話 鶴見中尉

“蝗害も暴動も 中央の人間がこんな地の果てまで確かめに来ることはまず無い”

“中央なんぞにはいつだって事後報告で充分だ”

 中央からの刺客や間諜に警戒していないのだろうか。油断によって不覚を取る、というのは作品内でもよく出てくるパターンなので、このような敵への軽視ととれる発言はちょっと恐い。陸軍の『中央』という言葉は月島や鯉登、鶴見中尉から度々出てきているが、そちら側の人間について今のところ一切情報が無い。実は既に入り込んでいて、終盤に正体を現す展開とかないだろうか。(個人的には、鯉登少将や有坂中将が怪しいのではないかと疑っているが…二人とも関わりが濃厚すぎるから違うのか。月島は尾形が中央の間諜と疑っていたが、これはミスリードな気がする。)

(ⅱ)謎の人影

14巻を読み返して一番ぞくっとした場面が138話にある。

網走監獄を舞台にした戦闘が終わり、燃える獄舎でひとりだけ立ち上がる影が不気味に描かれている。これは一体誰なのだろうか。

139話を見ると、日時は不明だが、監獄内を第七師団が見回って後処理をしているのは夜が明けた時刻である。一方138話で獄舎内に居た人影は、まだ暗い時間で描写されている。獄舎付近や周りの建物付近でも、描かれているのは教会堂を見ている土方だけである。このことから、第七師団は戦闘後、夜の間は火災から逃れるために監獄を退避していたと考えられる。

人影は『獄舎内の戦闘での生き残り』と考えるのが妥当と思われる。囚人か兵士か看守か定かでないが、兵士なら師団の仲間として息がある者を助けるだろうし、囚人(か看守)である可能性は高い(囚人ならば火災が収まった後死亡を確認すればよいだけなので、多少虫の息でも気づかれないか放っておかれた可能性が高い)。

ここまで考えて14巻をはじめから読み返すと、新たな可能性が浮上する。

14巻131話 

月島 “監獄側の人間が誰か一人でも証言すればその報告は成立しませんが…”

鶴見 “監獄側の証言者?”

 なぜこの会話があったのか。

 初見では月島が鶴見に恐れを持ち、不和となる予兆かと考えていたけれど、これこそ伏線ではないだろうか。

炎のなか立ち上がった『生き残り』の人影は、後に“監獄側の証言者”となって鶴見中尉を追い詰める相手なのかもしれない。第七師団が火災により退避していたならば、この人物は無事逃げおおせた可能性が十分にある(尾形やキロランケ、土方一行などは逃げおおせている)。

(思い付きにすぎませんが、そうだったら14巻は鶴見中尉の活躍を描きながら、実は一番追い詰められた巻なのかもしれないので、伏線が緻密すぎておそろしい…。

 鯉登少将が息子を樺太へ向かうよう指示を出したのは、鶴見陣営の粛清に巻き込まないためだったり…しないかな…)

 

14巻はそれぞれの人物の分岐点となる本当に重要な巻でした。何度読み返しても謎が深まる、密度の濃い巻でしたね。網走監獄の見学に行きたくなりました。

 

 

以上、①から③まで如何でしたでしょうか。

長文をお読みいただきありがとうございました。

それっぽく書きましたが個人の推測なので、本当のところはわかりません。

早く15巻が読みたいです。

(特典付き15巻はもちろん予約しました)

   ↓ ↓

 

銀河英雄伝説を"いま"再読したい理由

田中芳樹氏の長編SF小説銀河英雄伝説」。

長い戦争の歴史を持つ"専制国家"銀河帝国と"民主主義国"自由惑星同盟という二つの国家が、同時期に現れた二人の戦争の天才によって大きく運命を動かされていく様子を描いています。

1982年に1巻が始まってから1987年に10巻が出て完結した作品で、その後外伝も発表されています。

 

最近では、10年以上前の作品の再アニメ化の流れがあり、少し古い作品をリメイクして新たな顧客を狙うのが流行りです。

銀河英雄伝説」も流れに乗り、漫画化に再アニメ化、モチーフカフェの開設など様々な分野で盛り上がるほど人気が再熱しています。しかし「銀英伝」単なる流行りでなく、今の時代・今の社会情勢でこそ読んでほしい要素がたっぷり詰まっているので、その理由を以下で紹介していきます。

 

銀河英雄伝説 1 黎明編 (創元SF文庫)

銀河英雄伝説 1 黎明編 (創元SF文庫)

 

 

銀河英雄伝説を読んでほしい理由3選

①火花散る頭脳戦

②政治腐敗への関心

③心を打つ名言

順番に以下で書いていきます。

 

 

①火花散る頭脳戦

 「銀河英雄伝説」では、二人の天才の頭脳戦が見所のひとつです。

 一人は銀河帝国の下級貴族ラインハルト。貴族とは名ばかりの貧乏暮らしだったが、幼い頃に姉を皇帝の寵姫として奪われ、取り戻すために銀河帝国を打ち倒すことを決意して軍に入る。類まれな美貌と頭脳を持ち、戦場で「常勝の天才」と呼ばれ瞬く間に出世する。

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もう一人は銀河帝国と敵対する自由惑星同盟の軍人ヤン・ウェンリー奨学金のために士官学校に入るが、本来は歴史学者を目指していた温厚な青年。軍人の仕事を嫌いながらも、窮地に立たされる祖国の要請により戦場で才覚を花開かせる。窮地に立った味方を魔術のような作戦で救い出すことで「不敗の魔術師」と呼ばれ、ラインハルトにライバル視されている。

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(画像:アニメ銀河英雄伝説Die Neue These 公式HP gineiden-anime.com/  より引用)

 この二人を軸にして、壮大な宇宙艦隊戦と緻密な頭脳戦が繰り広げられる戦闘シーンが圧巻です。歴史小説大河ドラマなど好きにおすすめですが、ミステリ好きなどはヤンの考える秘策を予想するなどの楽しみ方もあるかもしれません。

 

②政治腐敗への関心

作中の舞台となる二つの国、「銀河帝国」と「自由惑星同盟」はどちらも建国から長い年月が経ち、権力の腐敗があからさまになっています。国のトップに君臨する為政者たちの腐敗が進み、国民にしわ寄せがいく社会の様子は、今日の社会情勢を見ているかのように思えます。

民衆を圧迫し、自分達だけ遊興にふける貴族と皇帝。

選挙の票を稼ぐため戦争を煽り、兵士を前線へ送る議員たち。

自分の利益のために民衆を圧迫する権力者たちの腐敗の描写を読んでいると、物語とはいえ現代社会にも少なからずある腐敗を連想してぞっとします。

特に民主主義国として描かれる自由惑星同盟の腐敗は他人事とは思えず、薄ら寒い思いをしながら読みました。

後半に描かれる「理想的な為政者の収める君主制「腐敗した為政者による民主制」の間で揺れる人々の葛藤は、民主主義や平和、個人と社会の在り方について真正面から向き合うことの大切さと難しさを教えてくれます。一つの答えを提示した、終盤のラインハルトとヤンの問答は一見の価値ある名シーンです。

わたしたちが普段当たり前のように思っている「民主主義」とは何なのか。どこに価値があるのか。そんなことを考えさせられました。

 


③心を打つ名言

 銀英伝で最も特徴的なのが、「登場人物たちの名言」の多さです。主人公から脇役まで、思わず口に出したくなるような名言が多くあり、お気に入りの言葉を探すのも楽しみの一つです。旧アニメ版の名言集がYou Tubeにあったので、参考として載せておきます。


銀河英雄伝説 名言集1

(銀英伝の旧アニメは、全110話というアニメにしてはものすごく長い超大作として作成されました。その為、長い問答や演説のシーンも丁寧に組み込まれており、音声で聴く名言に心打たれた人も多かったのではないでしょうか。)

主役級から脇役、一兵士一市民から権力者まで、それぞれの信念を言い表す名言の数々のなかには、きっとお気に入りの言葉を見つけることができるでしょう。

(「銀英伝 名言」で検索すると、凄い数の検索結果が出てきます。)

魅力的なキャラクターが多いのは、この名言の多さに由来するのかもしれないです。

格好いい台詞だけではなくて、毒舌や皮肉のたっぷり効いた台詞も多いのがまたいい。特に同盟側の舌鋒はかなり痛快で、実際に使ってみたいけど過激すぎて無理(苦笑)となるのが残念です。

 

 

以上、銀河英雄伝説を“いま”読んでほしい理由3選でした。

原作小説にマンガ、アニメと目白押しであり、不穏で不安定な社会情勢のいまこそ是非おすすめします。

 

 

 

 新アニメの視聴はこちらから↓

 

【五十音順・おすすめ小説紹介】29冊目 川上未映子

おすすめ本紹介、29回目です。
この記事では著者の五十音順に、わたしのおすすめ本を紹介しています。

前回に続けて小説ではないですが、小説のようにも読めるエッセイで気に入っています。
今回は川上未映子氏から。

 

きみは赤ちゃん (文春文庫)

きみは赤ちゃん (文春文庫)

 

 赤ちゃんを産むって、すごいことだ。

 著者自身の妊娠・出産、そして子育ての体験を綴ったエッセイ。

産婦人科で妊娠がわかってから、つわり、マタニティ・ブルー、出産準備、いざ出産までの心と身体の変化を赤裸々に書いた「出産編」と、産んでから母乳育児、産後クライシス、夫婦の危機、仕事と育児、保育園入園、そして1歳の誕生日までを書いた「産後編」の2部構成で、著者の実感のこもった日記風に書かれています。

 

作品の引用から、ちょっと中身を紹介していきます。

しかし物心ついたときからものごとの暗い面をさらに暗い色をした眼鏡越しにみつめ、ネガティブさにかけては人後に落ちないという自負のある、いわばネガティブ・ネイティブたるわたしである。これまでの人生、まずはつねに最悪のシーンを想像し、明日は今日より悪くなるに決まっている、そしてよいことがあれば必ずわるいことが3倍返しでやってくるというサイクルを信じ、よくわからないけど魂のどこかをあきらめながらしずかに鍛えてきたという実績がある。

 序盤からこんな感じで、著者の感性全開の妊娠体験記が綴られていきます。このネガティブさはさすがに凄まじいけど、物事をまず悲観的に見てしまう、明日は何か悪いことが起きるという思いはわたしも小学生の頃からずっと持っていたので、「こういう人もやっぱり居るんだ」と妙に安心してしまいました。

 この調子でいくと、不安と悲観に満ちた体験記なんだろうと思って全部読んでみると、それだけではなかったことがよくわかりました。

自分より上のネガティブ・ネイティブを自負する著者が、困難と不安に溢れながら赤ちゃんを産むことの感動を素直に書いていることに勇気づけられました。苦しみはたくさんあるけど、それだけじゃないというメッセージは、子どもを持つこと自体が苦しみのように扱われかねない現代社会の多くの人に、エールを贈ってくれると思います。

 

次に興味深かったのは無痛分娩で出産に挑む体験談。日本ではほとんど普及していない方法なので、体験した記録を読めるのは結構貴重で参考になります。自分で考えて決めたことなのに、高額の負担もしているのに、なぜか世間に後ろめたく感じてしまう。そういう妊婦の複雑な気持ちを垣間見ることができました。

無痛分娩にぜったい必要な麻酔医の確保と、設備の費用、というのが高額の理由のツートップ。それはまあわかるのだけど、なぜ欧米では同じ条件でそれほどまで高額にならず、その結果、一般的な選択肢として無痛分娩が普及しているのに、日本ではそんなふうにならないのだろう。

(中略)

「おなかを痛めて生んだ子」

「痛みを乗り越えてこその愛情」

とか、その手の信仰を疑わないところで出産まわりの設計が長らくできあがってきていまもずうっと維持されているから、経済面&精神面の両方において、妊婦にはそもそも選択肢もないというか、そんな状態ではあると思う。

 

最後に読んでいて一番ショックだった部分について。出産を経験していない人は一度が考えたであろう疑問。「出産って、そんなに痛いの?」

その答えのひとつが本書のなかにちらりと載っています。

するとそこには、人間の感じる痛みの痛さの順位、みたいな図が表示されてあるのだった。

(中略)

院長「指を切断するのが、人間の最大の痛み、といわれているのです!」

 妊婦たち「(そ、そうなんだ‥‥‥)」

院長「で、出産がどのあたりかというと?」

妊婦たち「(‥‥‥ごくり)」

院長「それは~、」

妊婦たち「(‥‥‥‥‥)」

院長「ここっ!」

つぎの瞬間、院長は思いっきり腕をのばして、その<指の切断>の、はるかはるかうえの、もうほとんど枠外といってもいいようなポイントを半ばジャンプするようにペンで猛烈にアタックしたのだった。

 

人間が感じる最大の痛みの遥か上って、もはや拷問じゃないのだろうか。

読んだ瞬間、体温がちょっと下がったのを感じました。

(世のお母さんたち、凄すぎる…)

昔指を骨折したときでさえとても痛かったのに、切断なんて考えただけで寒気がします。それ以上の痛みを「みんな経験したんだから」とか「病気でもないのに大げさ」とか、「安産ならよかったじゃないか」とか、外野が無神経に言ってはいけないということはよくわかりました。

 

例えば、自分が「命に別状はないから麻酔なしで開腹手術をしていい?」とか「大丈夫、他の人もやってるから!」とか言われるような感覚ではないのだろうか。もし元通りくっつくとしても、わたしは「みんな我慢してるから」とかいう理由で指を切断する気には絶対なりません。

自分が産むとしたら、こんな事実を知って産みたいと思えるのだろうか。やっぱり、もう少し常識的な痛みで済んだらいいのにと思ってしまいます。無痛分娩について日本では活発に議論されていないけど、安易に「必要ないだろ」とか「危険だからやめるべき」とかバッサリ切り捨てないで、真剣に正確な情報を集めて議論するべきだと感じました。

こんな尋常じゃない痛みに耐えるのが「ふつう」なんて、ちょっと冷静じゃないと思います。

 

出産方や産後の仕事の両立など、重たいテーマを書いていますが、この本は「辛い」ことだけを伝えるものではないです。新しい命への敬意と感動、赤ちゃんへ「きみに会えてほんとうによかった」という気持ちがひしひしと伝わってきます。当事者じゃなくたっていい。赤ちゃんが生まれるという奇跡を社会全体で大事にして、祝福できればいいなという明るい気持ちになれる1冊でした。

 

【五十音順・おすすめ小説紹介】28冊目 川上和人

おすすめ本紹介、28回目です。
この記事では著者の五十音順に、わたしのおすすめ本を紹介しています。

☟小説ではないですが、面白かったので紹介に入れました
今回は鳥類学者、川上和人氏から。

 

鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。

鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。

 

 タイトルにあるように、作家ではなく鳥類学者が書いているエッセイです。

鳥類学者の知られざる日常が垣間見れる作品で「研究者あるある」満載の、どうしようもなく格好のつかない研究者の姿を面白おかしく書かれていて最後まで笑いながら読めました。

目次を見てもらうと、本のイメージが大体掴めると思います。

 

第一章 鳥類学者には、絶海の孤島がよく似合う

第二章 鳥類学者、絶海の孤島で死にそうになる

第三章 鳥類学者は、偏愛する

第四章 鳥類学者、かく考えり

第五章 鳥類学者、何をか恐れん

第六章 鳥類学者にだって、語りたくない夜もある

 

細かい内容はあまりネタバレしないほうが面白いので書きませんが、学術書では一切ありません。ただただ鳥類学者の波乱万丈なフィールドワーク、鳥類へのコアな愛情、悪戦苦闘する研究の日々を綴っているエッセイです。

語り口がとても独特で、ユーモアあふれる文章からは堅苦しさを感じず、でも鳥類と研究への情熱がそこはかとなく伝わってきます。読み終わったらちょっと鳥類を調べてみたくなりました。

 

第二章の絶海の孤島こと小笠原諸島の調査のくだりなんかは、同情を寄せたくなるような苦難に満ちた調査について書かれており、自然科学系のフィールドワークを行ったことがある人はみんな「わかる!」と叫んだのではないでしょうか。普通の登山等レジャーでは味わえない道なき道を行く行程、危険生物との遭遇、重い荷物(サンプル採取)、ダニとやぶ蚊・小バエの大群。学生時代の悪夢のフィールドワークをちょっと思い出してしまいました。

のび太が「ぐうたら感謝の日」を制定した6月だというのに、我々は額に汗して準備を仕上げる。救急救命講習を受け、いつの間にか死亡時5000万円の生命保険をかけられる。「梅雨から脱して南の島なんて素敵♡」そんな幻想を吹き飛ばす男だらけの2週間のため、1年にわたって準備が進められた。

 ランプに集まる無数の小バエが、呼吸とともに口と鼻から侵入してくる。

(中略)

原生の自然が美しいなんていうのは、都会派の妄想に過ぎない。現実の自然は死体にまみれ、口にハエがあふれ、心の中に悪態が湧き、心身共にダークサイドに堕ちていく。だからといって呼吸をやめると、私自身が死体天国の仲間入りだ。

よく考えろ、私。何か解決策があるはずだ。

   (「鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。」第二章より一部引用)

壮絶なフィールドワークについて書かれていますが、語り口が軽妙なのでハラハラしつつ笑いながら読めます。

特に、上で引用した「解決策」がとても面白かったので、ぜひ確かめてみてください。

 

研究者なんて自分とは全く違う世界の人だと思っている人は、これを読んでみたらきっと親近感が湧くと思いますよ。