【近況】カクヨム投稿はじめました
コロナ禍もすっかり慣れてしまい、元の生活ってなんだっけと思う今日この頃。
感染状況は落ち着いているものの、職業柄(社会福祉関係なので…)感染対策は万全で過ごしているので、旅行も外食も友達と会うことも全然ないので、休日は近所に買い物に行ったり家で過ごすのが定番になりました。
暇だなあとか、代わり映えしないなあと思い、2021年に入ってから新たな趣味をはじめました。
ブログ更新をサボって没頭していたのが
・小説を書く
という新しい趣味。
書き方もなにも分からないので、買ってきたのがこの一冊。
たまたま本屋で見つけたのが買ってみましたが、結構役に立ちました。
これでなくても、「小説の書き方」みたいな本は一冊くらい目を通すとすんなり書きはじめられる気がします。
最初は1,500字くらいのショートショートからはじめて、今日までで書いた一番長い小説は14万字超になります。
そしてなんと光栄なことに、2021年日本ファンタジーノベル大賞の最終候補に選んでいただきました。ビギナーズラックだと思いますが、もうすこし書き続けてみようという気持ちになりますね。
ペンネーム「桧口りょう」です。Twitterの名字ガチャで遊んでいたら「樋口」という名字が出て、樋口一葉と同じ字は畏れ多いので漢字を変えた、という由来です。りょうっていうのは何となく適当につけました。
コロナ禍がなければ小説応募なんてしなかったし、恩田陸先生に自作を読んでいただくなんてありえなかったので不思議な感じがします。
落選作や応募しなかった小説はカクヨムに投稿していく予定です。
よろしければ暇つぶしに。
読むことと書くこと
最近、小説を書いている。
書いているといっても、書き方を調べた訳でもなく、ただ適当になんとなく、文章の形を小説っぽく整えて切り貼りしている。
今まで何冊の本を読んだのか、千冊くらいかなあとぼんやり思うけれど覚えてはいない。ただ、大量の本を読み続けても、語彙というのは意外と溜まらないし、小説がいきなり書ける訳ではないとよく分かった。
2021年1月1日、文字通り元旦から何を思ったかショート・ショートを書き始め、長いものでは3万字越え、短いものでは3千字足らずの文章を、ずっと量産している。思いついたテーマをつらつらと書き連ねるのを続けていたら、辞め時を失ってしまった。
自分で適当であっても書くようになってから、今まで読んできた『小説』というものは何なのか、心動かす文章とはどういうものなのか、考えるようになった。ある風景ひとつ、動作ひとつ書くにしても、表現の仕方によって感じ方は異なる。気分が沈んでいるのか、高揚しているのかで見え方は変わるし、視覚情報を描写するのか、匂いや音を描写するのかでも違ってくる。書いてみると、ただ主人公の視点から見た世界を描くだけでも一苦労だった。
自分は読んできた小説や、新しく読んだ小説を『書く』視点から読み返すと、あまりのうまさに唸った(当たり前ですが)。描写ひとつとっても工夫が凝らされていて、文字から風景が浮かび上がるだけじゃなくて、登場人物のものの考え方や感情が綺麗に、しかもさりげなく感じ取れるように書いてある。
一番重要なのが物語の構成、終盤につながる話の作り方で、小説のテーマが曖昧なまま書くと、話を収束させられなくなってしまう。たまにもやっとする読後感を味わうことがあるが、それはわたしの場合、物語の結末に納得できないとか、一貫したテーマを感じられなかったとか、そういうことが多い。小説を書くとただ言っても、
①話の構成
②テーマ
③場面設定
を細かく考えておかないとできないし、これに加えて表現の技法が必要になる。
いままで「面白いなあ」としか思っていなかった小説を、書くという視点で見ると全然違う感想がでてくるのは、目から鱗だった。
読むほうが大好きだけど、偶には書いてみるのも違った楽しみが生まれるので、楽しかったという感想です。
はたらく細胞☞はたらく細胞BLACK
うっかり観たら大変なことになった。
【公式】『はたらく細胞BLACK』スペシャルアニメ映像(フルサイズver.)~大ヒット漫画『はたらく細胞』スピンオフ~
つい先週、テレビで放映していたのを観たら面白かったので録画して今日見ました。
10話。
あの気の良い赤血球が…。衝撃展開に日曜の昼からもう駄目です。
毎日せっせと体中に酸素を運ぶ、新米赤血球。
しかし彼の職場の労働環境は、徹底的にブラック―!!
飲酒、喫煙、ストレス、睡眠不足……
不健康の総合商社のような世界で、
過重労働の末に細胞たちは何を思うのか?
これは、あなたの体の物語―。
(公式HP TOP(TVアニメ「はたらく細胞BLACK」 公式サイト)から引用)
身体の中の37兆個ほどもある細胞の一つ、赤血球が主人公の体内擬人化漫画『はたらく細胞』シリーズ暗黒版『はたらく細胞BLACK』。
なにがブラックなのかも知らずに観たら、まさかの"体内環境がブラック企業"。飲酒、喫煙、ストレス、睡眠不足、カフェインの摂取、暴飲暴食。荒れ放題の体内で次々発生する異常事態(様々な病気)に脅かされながら、ブラック企業で働く社畜のごとく働く細胞たち。
アルコールの摂取から来る肝臓への負担にはじまり、脱毛、尿路結石、肺血栓、胃潰瘍、…。いったいこの世界(身体)はどうなってしまうのか?日々体内に侵入してくる膨大な数の細菌と戦う白血球。ストレスで血流は悪くなるなか、人手不足にあえぎながら命がけで酸素を運ぶ赤血球。体内のあまりの惨状に絶句する。もともとシリーズ最初の『はたらく細胞』でさえ、体内の細胞の仕事量の大変だなあ、なんて思っていたのに遥に凌駕する超ブラック環境。
大人の体内は"ブラック企業"。ああ耳に痛い話だ。よく見ると、ブラックじゃない方の体内環境は整頓された小綺麗な街に描かれているのに、BLACKの方はところどころ汚れて、がたが来ている古い団地のようだ。比較するとわかって何とも芸が細かい。
☟はたらく細胞(ブラックじゃないほう)
ポカリスエット編可愛かった。
アニメ「はたらく細胞」の“新作”11.5話が公開!「ポカリスエット」とのコラボでアナザーストーリー
はたらく細胞(正常な体内)☞はたらく細胞BLACKへの凋落っぷりが酷い。
「はたらけ!はたらけ!はたらけ―――!!」
「どんな状況でも黙って仕事をするんだよ」
「これは天の恵みさ(カフェイン接種)」
「疲れてるのは皆一緒だ。休んでる暇なんてないだろ!」
「アルコールの量を減らしてくれ!!」
細胞の絶叫がこだまする。連日残業でボロボロになっているとき、体内も同じだけボロボロになっている…。ちょっと残業減らそうと反省した。
ブラックすぎる体内で懸命に働く細胞たちに、10話の追い打ちが…。
来週も観ます。そしてこの歌が耳から離れなくなった。EDが特に。
TVアニメ『はたらく細胞BLACK』ノンクレジットOP&ED/「走れ! with ヤマサキセイヤ(キュウソネコカミ)」&「上を向いて運ぼう with 赤血球 & 白血球」
抱腹絶倒したいときの小説3選
壮大な長編も、TLで気になって読んでみたい本も、好きな作家の新刊でも、どうしても読めないときがある。
毎日残業で余力がないとき、理由も分からず落ち込んでいるとき。本は読みたい。でも気力がない。そんなとき読みたいのが、只々笑える小説。
今日はどうしようもなく笑える個人的3冊を紹介します。
①国語入試問題必勝法(清水義範著)
これ、大好きなんです。
表紙からしてふざけまくった、おちょくってる感じがする装丁がいい。最近新装版が出たのに驚いたけど、この本が売れるのは分かる。
表題の『国語入試問題必勝法』は、本当に高校・大学の入試問題ででるような国語現代文問題について書いている。学生の”僕”が家庭教師の先生に、入試問題の必勝法を学ぶという短編で、わたしはこれを呼んで大学に無事合格した(※個人の感想です)。
「あるある!」と言いたくなる絶対解いたことのある既視感満載の問題文の解き方を、けれんみたっぷりに教える先生と、先生の教えを吸収していく学生の掛け合いが面白い。
でも、本当に笑えるのはこの短編集に掲載されている最後の話『人間の風景』だ。最初どころか何度読んでもふふっと笑ってしまう。老人たちがリレー小説を書く、という話で、文章が書けなくて七転八倒する人、変に情緒たっぷりに書いて逆に笑いを誘う人、職業柄犯罪の調書のように書いてしまう人。リレー小説がおかしな方向へ転げていくのがもう堪らない。3冊のなかで唯一の短編なので、ぜひ気軽に読んでみてほしい。
②楡家の人びと(北杜夫著)
一番面白いんじゃないかと思ってる。
北杜夫が自身の家族をテーマに書いた(※創作を含むが)自伝的小説。自伝、家族の話をここまで滑稽で笑えるテイストに出来るのかと驚く。脳病院(今でいう精神科)を営む一家の祖父、父、孫達と病院関係者を巡る流転の人生記。関東大震災、太平洋戦争を挟み激動の運命に翻弄される、どちらかと言えば過酷な状況の自伝なのに、登場人物のあまりの変人っぷりと奇矯な行動、失笑を誘う小心さや俗物っぷりを容赦なく書いていくので、全然湿っぽくならない。夜読んで、笑い過ぎて眠れなくなったことがある。逆に落ち込んだ日に読むと可笑しくて精神が復活するのでおすすめ。
長いけど、長いと敬遠せず是非2巻まで読んでほしい。2巻の『楡脳病院50周年記念運動会』のくだりでは笑い過ぎて腹筋が死にました。
度々紹介してるこの本。広く色んな人に!と勧めにくいけどこれも好き。
ただ、正統派の三国志を好む人は、何だこのふざけたは!と怒り出すのではないかと不安になる。三国志演義がOKな人は大丈夫。この本を読んだあと、もう普通の目で三国志を見られなくなる。
稀代の大変人諸葛孔明に、その場のノリとスター性だけで、どんどん民衆を犠牲になぜか生き延びる迷惑男劉備、人間兵器というレベルの張飛、関羽ら。劉備軍団という歩く災害に振り回される曹操や孫権、というイメージになってしまう。講談風の語り口が軽快で読みやすく、油断していると次のページにとんでもないギャグが入ってたりするので電車では読めない。これも2巻で笑い死んだ。学生時代これを読まなくてよかった。漢文で三国志が出題されたら気が散って解けないところだった。世界、いや宇宙一の大変人孔明が見られるのはここだけ。
以上、笑いたいときの3選でした。
最近は楡家の読み返しにハマってますが、仕事のストレスが吹っ飛ぶくらい面白い。でもあんな人達が家族だったらちょっと嫌だけど。
いまさら彩雲国語り③「王佐」(凌晏樹と紅秀麗)
物凄く放置していた下書きを発掘しました。
前回の記事に引き続き、彩雲国物語最終巻「骸骨を乞う」の読み解きに挑戦します。
前の記事はこちら☟
この連作記事では、本作を「宰相」「王佐」「王」の3つのテーマで分解して考えていきます。
次は2つ目のテーマ「王佐」。
「骸骨を乞う」上下巻の構成を見ると、悠舜→旺季→ 凌晏樹→劉輝(紅秀麗)→悪夢の国試組(紫)→重華(絳攸)がメインの連作短編集になっています。
王と宰相が大きな軸であるのは慥かですが、中盤に唐突に挟まれる‟凌晏樹”の話に、ちょっと違和感を感じたので、彼の役割について考えてみました。そして本編では描かれなかった"后"としての紅秀麗についても少し。
①凌晏樹
旺季のシンパで貴族派の筆頭。本編の最後に黒幕として華々しく登場する謎の多い人物。外伝では、凌晏樹が主人公として描かれた『北風の仮面』が発表された。骸骨を乞うのどの話も好きだけど、最初に読み返したくなるのがこの北風の仮面ー晏樹の話だったりする。
依頼を受けてターゲットを破滅させる美貌の悪魔を母親に持つ晏樹は、わずか六、七歳にして母親の"仕事"を引き継ぐことになる。母親譲りの美貌と残酷さを併せ持つ晏樹は、順調に依頼をこなし多くの"悲劇"を起こしながらずっと何かを探している。目先のものを楽しむことは出来ても、長く大事にしたいものは滅多に見つからない。そんななか、ある夜"仕事"の最中に邂逅した旺季と数度の再会を経て、旺季の傍に居ることに決める。
追われることに慣れ、人の運命を掌で転がしていく奔放の晏樹が徐々に旺季に惹かれ、無償の奉公をするに至る描写が刺さる。決して晏樹を求めない、追いすがらない旺季に苛立ちながらも、何度離れてもまた会いに行ってしまう晏樹。最後には、病で身体が不自由になった旺季の世話の為だけに出奔し、かいがいしく看病するなど旺季への深い愛情が伺える。
しかし何故、外伝で、しかも下巻の最初に凌晏樹の話を描いたのかと考えると、彼の役割がおぼろげながら見えてくる。
彩雲国物語は民を救うために尽力する『官吏』のパート、市井を生きて登場人物たちを下から支える『民』のパート、そして『王とその側近』のパートがよく見られる。主人公の秀麗が官吏だから、民を救いたいと奔走する秀麗達と意見や主義の違いで対立する朝廷の話がバチバチと描かれるけれど、意外と『王とその周辺』の話も散りばめられている。劉輝が王としての資質を問われ、朝廷を追い落とされる場面なんかかなり印象的だ。宰相と王の関係については前記事で触れたけれど、彩雲国物語という作品で王と宰相ともう一つ、『王佐』という役割が重要になっているように思う。
凌晏樹は旺季―もう1人の王を支える『王佐』として、ある意味紅秀麗と対になる役割を担っているのではないだろうか。
手段を択ばない悪辣な謀略。誘拐に殺人、市井の人びとの命を人質とした策略を仕掛けて悪役として登場した凌晏樹は、何故そこまでしたのか。その答えが外伝『北風の仮面』にある。
最後まで謎に包まれて去っていた彼の目的は、最初から最後まで"旺季を支えること"だった。旺季が王として立つならば、全力でそれを支えよう。主が手を汚す代わりに自分が行う。献身とも言える行いだったのかもしれない。病で春を見ることができない主に唯一最後まで付き従い、そのまま姿を消した晏樹は悪役とはいえ魅力的だ。宰相が"王としての孤独”を、そして執政を支える存在であるなら、王佐とは"王"という立場を超えたその人自身を、すべてを支えるという献身的な役割を指しているのだろう。
②紅秀麗
女人国試制が始まって登用された最初の女性官吏。大貴族紅家の長女でもある彼女は、妨害や挫折を味わいながらも頭角を現し、劉輝の治世下で活躍を繰り広げていく。本編で描かれるのはここまでだが、外伝では職を辞して后となった秀麗と劉輝の話が盛り込まれている。
幼い頃からの夢だった官吏になり、厳しい現実に何度も阻まれながらも民のために、身命を賭して行動し続ける彼女の眩しい活躍譚であった本編とは異なり、一人の女性として劉輝の元へ嫁いだ秀麗の話が描かれるのは結構意外だった。
秀麗にとっての優先順位は何を差し置いても"官吏という仕事"であり、それに強い誇りを持っていた彼女が最後に劉輝に嫁いだというのは、何というか少女小説のお約束というか帳尻合わせのようなもので、本筋ではないから本編ではないのだと思っていた。勿論、バイトから始まった劉輝との交流、秀麗の成長を通じて二人の関係が変わっていく恋愛の機微も素敵だけれど、本編での秀麗は一番大事な職を辞してまで嫁ぎそうに見えなかったので。
最後に残ったすこしの時間をすべて、劉輝のために使いたいと后になった秀麗は、周囲の予想に反して劉輝と喧嘩など一度もせず、静かな愛を育んでいく。喪った悲しみを手放せないほどかけがえのない宰相、悠瞬を得て、公私ともに信頼できる側近を得て、悩み苦しみながらも王として再び歩みだした劉輝は、秀麗との結婚で何を得たのか。そして秀麗は、どうして劉輝と結婚したのか。
それは、一人の人間として、"王"ではないときを含めた劉輝を愛する為だ。官吏として公平であらねばならないときは出来ない、最大限の愛し方。王の目となり足となり、多くの民を助けたその大きな心で、目一杯劉輝を愛した秀麗は、その時間こそ短いものの『王佐』として十分に役割を果たしたのだ。氷の心臓でとても好きなのは、秀麗が自分が早いうちに去ることをちゃんと理解して、周囲の人に劉輝を頼むと言っていく場面。自分はずっと一緒に居られなくても、思い出を残し、一つ一つ周囲に託して、自分が去った後の王が立ち上がれるように備えているところ。王が再び孤独にならないように、心を砕いて準備しているのが切ない。
私のいない世界でも。あなたが幸福でありますように。
(『骸骨を乞う 下』新潮文庫 雪乃紗衣著 P229頁より引用)
これ以上言うことはなさそうだ。
以上、彩雲国物語外伝に狂った妄想第三弾でした。
晏樹と秀麗、全然似てないのにそのひたむきさは綺麗な対比になるのがいい。
次は一番難しい、旺季と劉輝、戩華王の話を書く予定。